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書籍の詳細&ユーザーレビュー一覧

アイの物語
アイの物語
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角川書店

¥ 1,995

単行本

売上ランク:48260位

2006-06

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ユーザーレビュー一覧(全19件 平均:5.0)

評価5点「ラストで一気に繋がる「物語」」 2007-03-28
レビュアー:らいらっく(20人中15人が参考になったと回答)
小説は好きですが、小説で泣く事はほとんど無い私。
特に有りがちな人間讃歌的内容や、感動のハッピーエンドには(映画だと演技や音楽でつい泣いてしまう事はありますが)泣くより逆にしらけてしまう方が多いです。
多分、ストーリーに感動するよりも文体に惹かれたり文章そのものの美しさを重視するタイプなので。この本も書評や装丁に惹かれて読み始めたものの、前半はほとんど退屈でした。
"マシンがヒトに反旗を翻し、人工が減って文明も退廃した未来の地球"という設定もありがちだし、アイビスというアンドロイドが少年に「フィクションである物語」を話して聞かせながら進行していくんだけど、作中で語られる物語達もありがちSF的設定だったのと文章もシンプルなので少しつまらなさを感じて、前半部分読んだ時点でもう読むのやめようかとも思いました。けど第六話の「詩音が来た日」からはもう、止まらないです。一気に読んでしまいました。
それまで退屈に思えていた個々のストーリー達も、最後には必要不可欠のピースとして繋がった瞬間、この本の構成力の高さに驚かされました。
SFで何万回と使われ続けてきた「ヒトとマシンの共存」というモチーフを敢えて使って創られた世界。その狭い世界で最後にアイビスは言います。「私たちはみんなフィクションから生まれた。ヒトの夢、フィクションの海は、私たちのふるさとなのよ―(ここから先の台詞は是非本を手にして読んで下さい!)」この瞬間、世界中のあらゆる物語がこの言葉に救われました。
てゆうか私も普通に感動して泣いてしまった―ヤバイです、普通にお薦め。
本当、アイの物語。
評価5点「人間のスペックとは?人類の壮大な夢、ここに完結」 2007-11-15
レビュアー:MM(15人中13人が参考になったと回答)
適切に形容する言葉がない。山本弘氏に敬意を表するのみ。

内容については多くは述べない。『機械とヒトの千夜一夜物語』と帯にあるコピーがぴったりで、人間という知的(?)生命体のスペックで到達できる限界はどこなのか、に正面から挑戦した作品(と思う)。ラストはかつてない壮大な夢の完結を予想させると同時に清々しい感動を覚えた。

個人的には『と学会』の書をよく読んでいたが、文学(SFというカテゴリーでくくるべきではなくこれは文学である)としての山本氏の作品は初めて読んだ。SF小説を読むこと自体が星新一や小松左京以来、20年以上も遠ざかっていたのは、SF作品が紙媒体の本で読むよりも映画の方が優れているのではないかと考えていたせいかもしれない。氏がこれほどすばらしい作品を書いていたと驚くと同時に、自分自身はひどく反省した。どんなSFも映像化できると高をくくっていたが、この作品は映画にできない、というよりは文章であるが故に輝いている点が多いように感じる。当然読みながら情報を頭の中で映像化している訳で、内容を単純に映画にすることは可能かもしれないが、本小説を読んだ瞬間の感動は映画では再現不可能な気がしており、小説のすばらしさと奥の深さを再認識させられた。

前後逆になるが、本書を読む前に同氏の『宇宙はくりまんじゅうで滅びるか?』を読んでいたところ、この本は本書を読む前のよきウオーミングアップになった。まだ本書を読んでいない方は先にそちらを読むことを勧めたい。『宇宙は...』はレイヤー0であり、『アイの物語』はレイヤー1より先の話だ(この意味は『アイの物語』を読めばわかる)。

似非学者にツッコむ資格十分で、『SFはこんなに面白いんだぞ!(宇宙はくりまんじゅうで...)』と叫ぶ氏の集大成であり、その主張を支持したい。SF好きにしか本書は売れないのかもしれないが、そうでない読者にも広く勧めたいと感じる懇親の作品であった。文句なく最高点。
評価5点「感涙」 2006-06-25
レビュアー:kogonil_35(12人中10人が参考になったと回答)
「がんばるぞぅ、おう」に泣きました。

こんな救いがありえるとは思ってもみなかったです。
自分が消滅してしまうであろうこと、そしておそらくあの世はなく、霊もなく、審判の日の復活もない。
小説として面白く、思考実験として興味深いだけでなく、むしろこの現実に耐えるためにも読んでよかった・・・と。
評価5点「心温まる物語。」 2006-06-10
レビュアー:akina(11人中9人が参考になったと回答)
2040年代以降,意志を持ったマシンを創造し,それに敗北した人間。
文字の読める人間の方が珍しくなってしまった時代……
主人公は何年もコロニーを回って,1940年から2040年代
−−最初のコンピュータが誕生してからヒトがそれに追い越されるまでの時代
にかけて人間が造った話を語って聞かせている。
昼間は子供たちには冒険もの,女性にはロマンチックな愛の物語,男性には大人の物語etc。
人間は,マシンに捕らえられたヒトは,生きたまま皮を剥がされるとか,酸で体を溶かされるとか,
機械の体に改造されるなど,ということを夜ごと恐ろしげに聞かされて育つ。
しかし,実際はマシンに囚われたものの無事に解放された人間は何人もいる。
そして彼らはその自分たちの体験を語りたがらず,憎むべきマシンに助けられたことに
困惑していて,マシンに好意的な発言をしたら村八分にされかねないため,
あいまいなことしか口にできない……そんな世界がこの物語の世界。

そんなある日,主人公はマシンに捕えられる。
そこで出会った戦闘用マシン『アイビス』から主人公も知らない人間の造った物語を読み聞かされる。

この物語の1つ1つが人間の持っている心の温かさを感じることができました。
1つの物語を読み終えるたび,最初はマシンに対して警戒心を持っていた主人公の心も徐々に変わっていきます。

読み終えた後は,なんともすがすがしい気持ちになりました!
評価5点「9・11以降、人類が目指すべきことを読者の胸に打ち込む、465ページのSF小説」 2006-11-12
レビュアー:yukkiebeer(12人中7人が参考になったと回答)

 人類がマシンと闘い続ける近未来。「僕」は負傷した末、アイビスと名乗るアンドロイドの虜囚となる。アイビスは「僕」に数々の物語を読み聞かせる。仮想空間で逢瀬を重ねる男女。鏡の向こうのAIと友情を結ぶ少女。介護用アンドロイドとの交流で何かを学ぶ看護師。
 アイビスが語るこうした物語には果たしてどんな意図が隠されているのか…。

 私たちが今確かに存在すると信じる実世界と、コンピュータや人工知能が生み出す仮想世界。この二つの間の境界線が朧(おぼろ)なものとなり、両者の往来が自由になった時空間で、様々な物語が進行していきます。読者は今ある自分の存在が一気に不確かなものとなり、足元が揺らいでいく奇妙な不安感を幾度となく味わうことでしょう。

 しかし「アイの物語」はそうした自己存在の不確実さを改めて突きつけるための物語ではありません。私はそこに9・11以降、目指すべき方向を見定められずにいるこの世界を、もう一度正しい軌道に乗せようという著者の確固たる決意を見るのです。

 自分たちとは異質なものを恐れ、その恐怖を憎悪に変えて相手を払いのける本能がヒトには備わっています。種の保存を支える本能とはいえ、私たちはそのために多くの犠牲を払ってきました。
 アンドロイド/AIとヒトとの関係に著者が託すのは、こうした恐怖と憎悪の連鎖を断ち切ることの重要性。そしてそのために著者が用意するキーワードは、「記憶」と「共感/感応」の二つです。

 互いに理解できないもの同士が今まさにすべきことは、理解できないものを退けるのではなく、許容すること。その寛容を養うには、他者の記憶を自己のものとして積み上げる努力です。そのための訓練にフィクションは欠かすことができないということを、このSF小説は心の底から信じています。

 その著者の信念に私自身の心が共振するのが分かる、そんな震えるほど清々しい読書体験を得られる小説です。