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書籍の詳細&ユーザーレビュー一覧

野中広務 差別と権力
野中広務 差別と権力
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講談社

¥ 1,890

単行本

売上ランク:188530位

2004-06-29

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ユーザーレビュー一覧(全25件 平均:4.0)

評価3点「前半はムチャ面白いが後半は今ひとつ」 2004-07-10
レビュアー:ロバの王子(73人中60人が参考になったと回答)
 野中広務は自伝を2冊書いているが、それとは違った視点から見た他人による野中広務伝である。

 野中氏の政治手法で特徴的な点としては、①裏切り者には容赦ない冷徹なマキャベリズム、②弱者には非常にやさしい施策、があげられるだろう。この一見相反する要素を理解するためには、野中氏の出自や地方政治家としての前半生の認識が不可欠である。そして、野中氏の政治が理解できなければ、(小泉政権が誕生する前までの)自由民主党の理念が理解できないであろう。
 本書はその意味からも野中氏の人生を客観的に描写した貴重な文献たりうる。

 ただし、本書の前半部と後半部とでは、面白さのレベルがまったく異なる。差別を受けた少年時代、青雲の志を胸に秘めた地方政治家時代の面白さは一級といえる。しかし、国会議員になってから以降の記述は、あまり面白くない。これは、地方政治は理解できるが、国政を理解するまでにはいたっていない私の認識レベルによる部分もある。しかし、首長のリーダーシップで大きく変革しうる地方政治と、特定の個人がリーダーシップをとりにくい国政の運営手法の違いが本書にも現れているような気がしてならない。
 

評価5点「「影の総理」の影にあったもの」 2004-08-16
レビュアー:赤い炭酢(63人中54人が参考になったと回答)
 エピローグに、著者が月刊誌に野中の評伝を発表した直後に野中と議員会館で会った時のやりとりが出てくる。「君が部落のことを書いたことで、私の家族がどれほど辛い思いをしているか知ってるのか」と野中に詰られた著者は、家族への侘びを口にしつつ、「これは私の業(ごう)なんです」という言葉を搾り出す。本書には、まさに書く者としての「業」を感じさせる執念が漲っていると思う。
 部落差別や土建屋の談合、宗教団体など、関わる事柄は一筋縄ではいかないものばかりで、その取材は大変だっただろう。京都という土地柄、裏づけとなる話をしてくれる人は極めて少なかったはずだ。問題が問題だけに、その舞台裏を書くことは簡単なことではない。それをやり遂げた著者に敬意を表したい。

 本書中に、麻生太郎が会合で「部落出身者を総理にはできないわなあ」と発言した、という記述が出てくる。こうした差別が結局は野中が総理になることを阻んだのだと。果してそういった差別が現実にどれほどのものであってどう野中の進退に影響を及ぼしたのかは実のところわからないのだが、少なくとも、麻生太郎を総理にはできんわなあ、とは言っておきたい。
 野中は色んな顔をもっている。差別問題(いわゆる部落差別だけでなく、ハンセン病原告団への理解もある)に取り組むマイノリティーとしての顔と、権力の中枢を操るフィクサーとしての顔。いずれの顔も見えるようなエピソードが、本書には描き込まれている。力作である。

評価5点「凄みを感じました。」 2004-07-27
レビュアー:ドクター・フィッシャー(28人中19人が参考になったと回答)
ある種、凄みを感じた。よくまあ、これだけの内容を取材できたものだ。
これほどの労作を読むことができた読者としての幸せはさておくとして、野中広務という人間が持つ物語性の深みと言ったら。
勤め人であることを辞めた時と政治家を辞めた時に重なり合う野中氏に対する唾棄すべき差別感……。

評価4点「特異な政治家の原点と現在」 2004-10-10
レビュアー:hennna(17人中15人が参考になったと回答)
野中広務という不思議で特異な政治家の原点を解明しようとしたノンフィクション。「反差別」と「権力志向」が同居した野中の行動のプロセスが戦後政治のを背景に辿られている。
野中が被差別部落出身ということは、公然の秘密だった。野中は、自分が受けてきたいわれなき差別を、個人の力や革新政党の力でではなく、保守・自民党の力ではね返そうとした。そこに野中の特異性がある。
また特筆されるのが、野中と公明党・創価学会とのつながりである。弱みを握られた公明党側が野中に接近したことが、後の「自公連立政権」につながっっていったという著者魚住氏の結論は、現在の政治状況からみても、まことに興味深いものがある。
現在、連立のパワーバランスによって何とか持続しえている小泉政権。その小泉を痛烈に批判しているのもまた野中なのである。
評価4点「政界の狙撃手の生い立ちから引退まで。」 2005-02-01
レビュアー:marominja(33人中15人が参考になったと回答)
大志を抱きつつ実務能力を身につけた、町議・町長・府議・副知事時代と前半は筆が冴え渡る。冒頭の母のぶを巡る事件、野中の運命を変えた大鉄局事件は衝撃的だった。彼は自力でハンディを乗り越えるべきという信念から、時には解放同盟を非難する事も少なくなかった。部落民への便宜が妬みを生み、却って新たな差別を生むと恐れたのだ。反面、解放同盟への批判が一般受けするという計算も巧妙に働いたのかもと作者。

一町長として、予算を知事の裁量で左右される現実の中で、彼はまず蜷川派を選ぶ。が、やがてその締めつけに嫌気がさし、いずれ国政に打って出るため自民党を選ぶ。蜷川引退後、副知事となった彼は府政の中枢から蜷川派を一掃する。そしてそれ以上に締めつけを行い建設業界を掌握していく。

「潮目を見る」政治家。悪く言えば、終始一貫しない、定まった政治思想がない、そして、目的のためには手段を選ばない。昨日の敵とも利があらば手を結ぶ。自社さ連立・自自公連立も高度な折衝・調整能力のある彼あればこそ。ハンセン病の国控訴取り下げ、被爆者援護法、8月15日総理談話、阪神大震災での百万円の公的補償等功績も大きい。弱者に対する優しい視線も、しかし、根本解決を図るものではなかった。それは彼が自民党員であること、そもそも日本が米国に首根っこを押さえられている国だという限界があった。

国旗・国歌法は失敗。公表されなかった石川校長の「今日、学校へ教育次長が来た。苦しかった」という一文にこそ真実がある。現場の犠牲者を出さないための法が今や多くの教師・子ども達の内面の自由を奪っている。

中盤、中央政界での記述はややトーンが落ちるが、最後にピリッと締まる。最終章の麻生太郎の差別発言に対する野中の抗議だ。本当にこんな失言ばかり繰り返す無能の輩を大臣の椅子に座らせておくのは日本の恥。麻生は叩き上げの野中とは対極的に厚い姻戚関係に守られた男だった。