ユーザーレビュー一覧(全25件 平均:4.0)
「前半はムチャ面白いが後半は今ひとつ」 2004-07-10 野中氏の政治手法で特徴的な点としては、①裏切り者には容赦ない冷徹なマキャベリズム、②弱者には非常にやさしい施策、があげられるだろう。この一見相反する要素を理解するためには、野中氏の出自や地方政治家としての前半生の認識が不可欠である。そして、野中氏の政治が理解できなければ、(小泉政権が誕生する前までの)自由民主党の理念が理解できないであろう。
本書はその意味からも野中氏の人生を客観的に描写した貴重な文献たりうる。
ただし、本書の前半部と後半部とでは、面白さのレベルがまったく異なる。差別を受けた少年時代、青雲の志を胸に秘めた地方政治家時代の面白さは一級といえる。しかし、国会議員になってから以降の記述は、あまり面白くない。これは、地方政治は理解できるが、国政を理解するまでにはいたっていない私の認識レベルによる部分もある。しかし、首長のリーダーシップで大きく変革しうる地方政治と、特定の個人がリーダーシップをとりにくい国政の運営手法の違いが本書にも現れているような気がしてならない。
「「影の総理」の影にあったもの」 2004-08-16 本書中に、麻生太郎が会合で「部落出身者を総理にはできないわなあ」と発言した、という記述が出てくる。こうした差別が結局は野中が総理になることを阻んだのだと。果してそういった差別が現実にどれほどのものであってどう野中の進退に影響を及ぼしたのかは実のところわからないのだが、少なくとも、麻生太郎を総理にはできんわなあ、とは言っておきたい。
野中は色んな顔をもっている。差別問題(いわゆる部落差別だけでなく、ハンセン病原告団への理解もある)に取り組むマイノリティーとしての顔と、権力の中枢を操るフィクサーとしての顔。いずれの顔も見えるようなエピソードが、本書には描き込まれている。力作である。
「凄みを感じました。」 2004-07-27
「特異な政治家の原点と現在」 2004-10-10
「政界の狙撃手の生い立ちから引退まで。」 2005-02-01一町長として、予算を知事の裁量で左右される現実の中で、彼はまず蜷川派を選ぶ。が、やがてその締めつけに嫌気がさし、いずれ国政に打って出るため自民党を選ぶ。蜷川引退後、副知事となった彼は府政の中枢から蜷川派を一掃する。そしてそれ以上に締めつけを行い建設業界を掌握していく。
「潮目を見る」政治家。悪く言えば、終始一貫しない、定まった政治思想がない、そして、目的のためには手段を選ばない。昨日の敵とも利があらば手を結ぶ。自社さ連立・自自公連立も高度な折衝・調整能力のある彼あればこそ。ハンセン病の国控訴取り下げ、被爆者援護法、8月15日総理談話、阪神大震災での百万円の公的補償等功績も大きい。弱者に対する優しい視線も、しかし、根本解決を図るものではなかった。それは彼が自民党員であること、そもそも日本が米国に首根っこを押さえられている国だという限界があった。
国旗・国歌法は失敗。公表されなかった石川校長の「今日、学校へ教育次長が来た。苦しかった」という一文にこそ真実がある。現場の犠牲者を出さないための法が今や多くの教師・子ども達の内面の自由を奪っている。
中盤、中央政界での記述はややトーンが落ちるが、最後にピリッと締まる。最終章の麻生太郎の差別発言に対する野中の抗議だ。本当にこんな失言ばかり繰り返す無能の輩を大臣の椅子に座らせておくのは日本の恥。麻生は叩き上げの野中とは対極的に厚い姻戚関係に守られた男だった。