ユーザーレビュー一覧(全4件 平均:4.0)

「ストレスについて知りたいときに最適の入門書」 2008-08-10
レビュアー:qetuo15(6人中5人が参考になったと回答)
「ストレスとはなんだろう」という表題にひかれて本書を一読したが、内容の面白さに思わず引き込まれてしまった。
第一章から第三章では、ストレス学説誕生前夜の医学の進歩の状況が、わが国の野口英世、高嶺譲吉など多くの研究者たちのあまりにも人間的な争いを通して語られている。
第四章から第五章では、本書の主人公であるハンス・セリエが登場する。彼がラットの実験で失敗を重ねたあげく、ストレス反応のアイデアが、まるで天啓のように彼の頭脳に浮かぶくだりは感激的である。また、セリエと彼の上司の間の葛藤にも想像をまじえながら鋭く切り込んでいるが、ここは、自身が研究者である筆者でなければ書けなかったことであろう。
第六章ではセリエが先鞭をつけたストレス反応の全経路が、彼の弟子たちによって解明されていったことや、弟子たちの競争の様子が生々しく描かれている。
第七章と第八章では文明社会を築いた人類特有の難問、精神的ストレスを克服する方策が論じられておりここも読み応えがあった。
ハンス・セリエのストレス学説のみならず、ストレスに関心がある人にはぜひ一読をお薦めする。

「食傷気味」 2008-09-07
レビュアー:Achiles(5人中3人が参考になったと回答)
セリエのストレス学説誕生を軸に、科学史(といっても、誰がノーベル賞を取ったかというレベル)に重点をおいて書かれている。最近では「生物と無生物のあいだ」などともそういう部分は似ている。ただ、なぜか本書の内容にはうんざりしてしまった。
その理由を考えてみた。第一は科学史といっても誰が誰の弟子か、誰がノーベル賞を取ったかという表面的な記述にとどまっていること。ヒーローもトリックスターも登場しない。第二は著者が愛情を抱いているのはセリエ博士と科学者である父だけで、一人一人の科学者に対しては愛情のない批判になっている。
科学者は人格者である必要は無い。サイモン・シンなどは、いろいろと問題のある科学者にも、その立場での苦悩を人間のドラマとして書いている。だから読めたのだということが、本書を読んで改めてわかった次第である。
肝心のストレスについては、ひととおりの説明に終わっていて、最新の研究成果などは本書に期待しない方がよい。

「ストレス学説誕生のいきさつを活写した貴重な本」 2008-10-11
レビュアー:吉岡勝(2人中2人が参考になったと回答)
ストレスという言葉はなかば常識のように使われているが、このストレスの概念を生み出したハンス・セリエについては全く知られていない。
本書を読んで、天才的な科学者セリエが、ラットの実験で失敗を重ねながら遂に大自然の摂理であるストレス反応の発見に至った経緯を知り、なるほどと感心した。
また、セリエに先行する高峰譲吉や、セリエの後に続くストレス反応全経路の解明に、日本人の研究者が関係していたことを本書によって初めて知った。
さらに、精神的ストレスが自律神経の働きを狂わせるしくみについて、生理学の立場から具体的かつ明快な説明がなされている点も参考になり良かったと思う。
久しぶりに目からウロコが落ちる思いのする良書だった。

「セリエへの想いが伝わってくる」 2008-10-13
レビュアー:Jim(2人中2人が参考になったと回答)
著者の歴史観をめぐり、本書については賛否両論あるようであるが、私は「賛」に組したい。私自身この分野はまったくの素人で、ストレスについては世間的な知識しかなかったが、読み進むうちに、著者の語り口に引き込まれ、気がついたら全部読み終えていた。当時の研究者間の人間模様を交えながら、セリエのストレス学説がいかに革新的であったかが、ひしひしと伝わってくる。著者のセリエに対する想いいれはいったいどこから来ているのかといぶかっていると、最後にそれが明らかになる。著者の父親はセリエを日本に紹介した立役者だったのだ。著者も学生時代にセリエに会っている。しかし今日、セリエの名前が知られていないことを危惧し、父親からバトンを渡された思いで本書を執筆したらしい。私は、歴史というのは事実の上に個人の認識を投影してこそ価値があると信じている。その意味で、本書は著者のセリエへの想いが投影されたすばらしい著作であると思う。