ユーザーレビュー一覧(全28件 平均:3.5)

「長い長い予告編を読んだような感じ」 2008-11-01
レビュアー:ウッドペッカー(3人中1人が参考になったと回答)
「超能力」というテーマに惹かれて買いましたが、物語はヤマ場らしきものがなく終わってしまい、長い長い予告編を読んだような気持ちになりました。「自分の念じた言葉を他人が話す特殊能力」があれば、どのように自分をとりまく世界が変わるのか、その仮想世界を見せてくれると勝手に期待していたのですが・・・。ただその期待感がふくらんだのは、この小説に引き込まれていたからともいえますね。
あえて謎は謎のままで残し、次の展開の含みを残したまま終わるので、その後は各自で想像(創造)するというのが、この小説の楽しみ方でしょうか。
なお他のレビュアーの方も書いているとおり、政治的な議論の底が浅すぎて「もっと社会意識の高い人物を出してよ」と言いたくなりますが、それは主なテーマではないと「文庫あとがき」にありました。

「面白さは感じませんでした」 2008-11-22
レビュアー:buono_buono(1人中1人が参考になったと回答)
裏表紙に「何気ない日常生活に流されることの危うさ」が綴られていると書かれており、確かにそのようなテーマが感じられるところもありますが、もし著者がそれをメインテーマに据えているのだとしたら描き方が非常に浅い。
それ以上にまるでどこかのウェブサイトを覗いているかのような政治的論議の浅さの方が悪目立ちしてしまっています。
ただ、その政治的論議に関してもメインテーマではないのは、「文庫あとがき」にも書いてある通り。
その「文庫あとがき」には、「この物語の中に出てくる政治的なことはテーマではなく、社会や政治の事柄がよく含まれていて、そこから滲んでくる不穏さや、切迫感や青臭さがとても好きだったので、自分の書くものにもそういう部分を含ませたかった」と書かれているのを見た時に、とあるお笑い芸人が、「社会問題をお笑いのネタとして扱っているだけで、何らかの政治的なメッセージを送っているつもりはない」と言っていたのを思い出しました。
このお笑い芸人に対しては、ある評論家は、「彼は真面目なことを語っているのではなく、真面目な態度で思ったことを好き勝手に述べているのだ」と話していましたが、私は同じようなものを伊坂氏とこの小説に感じました。
つまりこの小説で伊坂氏は、あくまで社会や政治の事柄は「ネタ」として、そこから自分の想像力を屈指して頭に思い描いた世界を好き勝手に描いただけなのだ、と。
ただ、この小説の場合、あらゆるメッセージ性を抜きに単に「エンターティメントとしてどうか」を見ても、話に全く引き込まれず、この後に続編『モダンタイムス』があり、そちらを書く前提でこの小説を仕上げた印象があるためか、終わり方が非常に中途半端に感じました。

「それなりに読ませるが〜「魔王」と「呼吸」を分離する必要があったのか」 2008-12-06
レビュアー:紫陽花(2人中1人が参考になったと回答)
「魔王」、「呼吸」の二作を収めた連作中編集。作者特有の「人の心を思い遣る」と言う優しさが溢れていて、読んでいて爽やかな気分になる。社会問題に正面から切り込んでいる点も特徴。
「魔王」では、主人公の安藤がフトした事から、自分が念じた言葉が他人の口から出る現象に気付くのが発端。それも、キッカケは"他人への思い遣り"に欠けた人間への反発心からである。主人公は何事も考え込むタイプで、眼の前の老人に50年後の自身を見て泣いたりする。そうかと思うと「アンダーソンと安藤さんは似ている」とジョークを飛ばす日本語が達者な英会話講師アンダーソンが出て来たりと自在な展開。作品の中で、ムッソリーニへの言及を初め、全体主義への危惧の念が露骨に出ているのも特徴で、今の時代を考えさせる。アメリカの自国本位主義への集団憎悪で、アンダーソンの家が放火されたりする。マザー・テレサの「愛の敵は憎悪ではなく、無関心」との言葉が本作の主旋律か。一方、主人公の弟潤也とのやり取りは「重力ピエロ」を思わせ、微笑ましい。また、「グラスホッパー」と言う酒も出て来る。作品間の繋がりを大事にする作者らしい。ファシズム(=無関心)と闘う安藤と宮沢賢治の詩が交錯するラストは印象的。「呼吸」は「魔王」の五年後と言う設定で、ヒロインは潤也の妻の詩織。舞台は作者のお膝元仙台。中身を読む前は"あらずもがな"の作品にならなければ良いなぁと言う想い。「魔王」は完結した作品だったので。案の定、作者の思想や昨今の社会問題が前面に出ていて、それなりに読ませる作品だが、「魔王」と分離した意図が不明。「魔王」中に書き込みを加えれば上質の長編になったと思う。

「終わり方が…」 2008-12-17
レビュアー:Goh(2人中1人が参考になったと回答)
何気ない日常の中で進行するファシズム…というのがこの作品の主題なのでしょうが、
張られた伏線は答えを何となく匂わせるだけで回収することもなく、
そもそも登場する政治家、犬養の目指していたものがファシズムで、
起こったいくつかの事件が犬養が企図したものだったのかすら曖昧で、最後の最後にまた謎を生んで、唐突に終わります。
最後の文章の後に続く空白と、あとがきでやっと終わった事がわかるくらいで、
読み終えた後は途方に暮れるぐらいです。
国民の政治への無関心と、伊坂作品の独特かつ面白い台詞回しやセンスはよかったのですが、
あまりにも読者を突き放しすぎている気がしました。

「続きを読まねば!」 2008-12-23
レビュアー:オーナーオブ・ロンリーハーツクラブバンド(1人中1人が参考になったと回答)
後書きで作者が材料には使ったがテーマではないと断っていますが、「政治」を扱っていることに大変驚きました。浅薄だとの厳しいレビューもありますが、政治の不毛、アメリカとの関係等私にとっては非常に興味のある分野ですので、意外でしたが大変面白く読みました。キャラ設定も相変わらず巧みで、特に犬養首相は際立ってますね。
但し、連続した二つの短編集で更に続編があるからでしょうか、ストーリーの全体観や一連の顛末が見えそうで見えず、デビュー作と同様に非常に想像力を掻き立てられますが、評価のばらつきが正に語っている通り少しだけストレスも残ります。続編も必須かと。