ユーザーレビュー一覧(全19件 平均:4.5)

「実用に役に立つ実用書なのに、なぜだかべらぼうに面白い!」 2008-04-28
レビュアー:馬場伸一(57人中49人が参考になったと回答)
本書はノンフィクションライター野村進氏が、「調べて書く」ことの「技術」についてまとめた本である。
つまり「実用書」として企画され、じっさいに「実用」の役に立つ本である。
4章までの「取材」についてのプラクティカルな解説は「ものを書く」ということに具体的に有益である。
「読みやすくてわかりやすい実用書だな」というのが前半を読んだところでの感想だった。
ところが後半、本書はとんでもなく面白くなるのである!
5章の「原稿を書く」については、古今のノンフィクションの名作の例文が紹介してあるのだが、これがべらぼうに面白い。
その本を読みたくてたまらなくなるのだから、すぐれた書評でもある。
このへんから、加速が始まる。
6章の「人物を書く」でさらに加速した本書は、7章「事件を書く」でクライマックスになる。
筆者の短編ノンフィクション「5人の少女はなぜ飛び降りたか」が全文紹介され、その取材過程が明らかにされる。
評者には「5人の少女〜」は未読であったので、このノンフィクションだけでも十二分に衝撃的であったのだが、
さらにそれに加えて「取材の舞台裏」が明らかにされる。
「ああ、これはこうやって取材されたのか」ということが分かるのだ。
例によって野村氏の達意の文章で。
一流のミステリを読むのと同じ、「ぞくぞくっ」を何度も感じた。
断言する。この7章を読むためだけでもこの本を買う価値がある。
最後は8章「体験を書く」で余韻を漂わせて終わる。
このへんもなんだか良くできている。
役に立つ上に、べらぼうに面白い。実に希有な本である。

「モノ書きを仕事とする人でも一読して損はないと思うほど、内容が濃い一冊。」 2008-05-05
レビュアー:Solange(36人中33人が参考になったと回答)
野村氏の著作には以前から注目していた。特に「千年働いてきました」は、小生の大好きな本である。とにかくテーマ設定の視点が面白いのだ。テーマ設定も興味深いのだが特筆すべきは、丹念な取材と魅力的な文章にあると思う。またどうしたらあのような取材と表現ができるのか、その秘訣を常々知りたいと思っていた。本作は、野村氏自身の編集者としての方法論が定まってきたこと、最近非常識な編集者が増加してきたとの問題意識から世に出ることとなった。特に個人的には、第5〜8章の「原稿」「人物」「事件」「体験」の書き方が実践的で参考になった。モノ書きが本職の人でも仕事の質をあげるという点で、大変参考になると思う。一読をお薦めしたい。

「いい本に出会うと・・・」 2008-05-22
レビュアー:よっちゃん(16人中13人が参考になったと回答)
いい本に出会った時、その本を読んでいる間に残りのページが気になる。「後これだけしかない、ああ残念だ…」「もっと読んでいたい」。こういう本に限ってアッという間に終わってしまい、もう読むところがないのか、ひっくり返して探してしまう。
この本はこういった本だ。
何気なく読み飛ばしている雑誌の中にあるルポルタージュにこれだけの労力がかけられているのか、と感動すると同時に頭が下がる。
野村進は最近のルポの中には労力がかけられていないものが多くなっている、という。人間関係の構築を含めた労力がかけられていない、という。
しかし、現在の日本の社会が抱えている問題ではないか、とは言っていない。
ここに頭が下がる。自分の意見の押し付けではないのだ。
野村進の書いた文にこの本で初めて出会った。
この本を読まずとも彼のかけた労力が行間から滲み出ていることが感じられる。
素晴しい作家と出会った。
もっと早く出会いたかった。
なぜなら、ジャーナリストを目指したくなるからだ。

「すべての社会人の役に立つ本」 2008-06-01
レビュアー:韓国の龍(11人中9人が参考になったと回答)
野村進氏の本は「コリアン世界の旅」や「千年働いてきました」を読んで以来、その誠実な筆致に大きな信頼感を寄せている。
野村氏が北野武氏をインタビューした際、最初はずっと顔を上げず言葉少なかった北野氏が、野村氏の「好きなボクサーは誰ですか?」との質問に「林拳児かな」と答えたのに対し、『「ああ、あの福岡中央(ジム)の。腰をやら(痛め)なかったら、最低でも日本チャンピオンになってたのに残念でしたねえ」そう言った途端、下を向いていたたけしが、初めて顔を上げた。ちょっとびっくりしたような顔をしていた。しかし、そのことはおくびにも口に出さず、「うん、東海林博に勝ったんだけどね・・・」(後略)」(P.38)という話が紹介されている。これはインタビューの時に先入観をもちたくないので相手のことを一切調べずに行く、という人もいる中で、自分(野村氏)はそれを薦めない、という話から続くものだ。
野村氏は、ノンフィクションライターとして仕事を進めるにあたって当たり前の心構えや礼儀作法を欠いた若いノンフィクションライターが沢山いることに不安を覚え、敢えて自分の仕事部屋をすべて公開した・・・それがこの本。
読んでみると、それはノンフィクションライターに限らず、すべての社会人が応用できる、応用すべき仕事術であり、常識であり、より豊かに生きるための智恵だ。
3年前のソウル日本人学校秋祭りの古本市で千Wonで買った「コリアン世界の旅」。僕はこの本で野村進氏と出会ってよかったと思う。

「優れた「プロ論」」 2008-06-16
レビュアー:希望を探して(10人中8人が参考になったと回答)
この本は題名の通り、一通り、「調べる技術」と「書く技術」について書いているが、読んだからといってすぐに身になるものではないと思う。ノウハウというよりも仕事に対する「姿勢」、すなわちそれがアマチュアとは全く違うという意味で「プロ論」について記述したものであり、どんな意識を持って仕事に対して取り組むべきかを吸収すべき本である。
書中に現れるノンフィクション文章を読んでみると、すぅ〜っと体に入ってくるが、そのためにどれだけの調査を行っているのかがポイントである。単に読みやすい文章を作っているのではない。構成そのものが練りに練られており、それが故に理解しやすいのである。そのためには「調べる技術」が重要であり、さらに印象深くするために「書く技術」が必要なのだ。
本当にノンフィクション作家になろうとしてこの本を手にする人は少ないであろうが、それなりの「書き手」になろうとするのであるならば、書中に紹介されている本は、今すぐにでも読むべきなのだろう。
こんなにがんばっている人がいる、そう感じられるだけで自分もまた頑張ろうと思える一冊である。