ユーザーレビュー一覧(全4件 平均:4.0)

「黒田硫黄の新境地(?)」 2008-09-04
レビュアー:ヨシノボリ(10人中7人が参考になったと回答)
しばらく休筆状態にあった黒田硫黄の数年(?)ぶりの新作。
黒田漫画の常連的な「考え無しの若造」を第2次世界大戦時に置き換えただけかと思ったら、随所に昔のこの作者にはなかった表現や描写が出てくる。
にもかかわらず、どこへ向かっていくのかわからないドライブ感や、人生や世界や生命に基本的に肯定的で、快楽的な表現主義は相変わらずで、そこがうれしい。
チンピラ的な安楽生活を送っていた主人公のマックスが、はずみで拾った鞄の大金が理由で軍隊へ逃げ込み、軍隊生活を送るうちに、次第に男として人間として成長していくという、いわば定型のストーリーなのに、まったくありがちに思えないのは、やっぱり黒田硫黄の漫画的実力ゆえ。
この物語は、実際に箱根に駐留していたドイツ軍人の実話をベースにした漫画らしいので、プロット的な結末はたぶんきまっているんだろうけど、それを知ってようが知るまいが、漫画の面白さに全く影響がないのがこの作者の凄みだろう。
しばらくの休筆で知名度的には下降した黒田硫黄、復活したらその漫画はやっぱりすごかった。
ところでこの漫画の軍事的な考証はどこまで正しいんでしょうね? アーミーマニアはうるさいと聞いていましたが、この漫画はノーチェックなんでしょうか。海軍生活が主舞台ですが、軍記物という気はまったくしないので、マニアさんの考えも知りたいところです。

「黒田硫黄の久々の単行本」 2008-08-28
レビュアー:eureka-seven(2人中2人が参考になったと回答)
黒田氏の軍オタ(特に海軍)趣味が炸裂。
また、氏は本当に食べ物を美味そうに描く。
そんなところも宮崎駿に通じるものがあるかも。

「それでも、まだ行き先が見えない・・・」 2009-01-02
レビュアー:DPOEX(2人中1人が参考になったと回答)
実のところ、黒田硫黄という漫画家の事をぜんぜん知らない。
ちょっと前にドラマか何かになった『セクシーボイスアンドロボ』という話の作者らしいが、そんな事も知らなかった。
で、この漫画。ササッと目を通せる感じの話ではない。ひょんな事から大金を手にしたマックスが、一目惚れしたベルタという娘に金を預け、身を隠す積もりで軍隊に入るが・・・という筋書き。
退廃から一転、窮屈でしかも死がすぐ傍にある緊張感の中に放り込まれた主人公。
戦友や上官は実に個性派ぞろい。
いつも死と隣り合わせなだけに、それぞれ独特の哲学を持って生きている。
生きると言う事の本当の意味に気づきかけている主人公の葛藤が、時に深刻に、時に明るく描かれていて、読む者の人生にも重なってくる。
人間がすがって生きるもの、必死に探し出す希望とは何か。それはどれほど確かなものだろうか。
そんな事をさりげなく問いかけてくる。
ただ、どうしても引っかかる点が一つ。なぜマックスはベルタにあれほど惹かれたのだろう。
特徴のあるキャラクターでもなく、マックスの求愛にさして乗り気でもない。偶然再会しただけの、幼馴染のパン屋の娘。
単なる刹那主義なのか、それとも何かの理由が後に明らかになるのであろうか。
いずれにしても、自分の命運を託すほどのインパクトを受けたはずの、その場面が欠落している。
この出だしの重要な部分がもし明確に提示されなかったら、物語自体がずいぶん陳腐なものになってしまうだろう。運命を信じる生き方はあっても、突飛なだけの行動の先に未来はないのだから。
むろん杞憂に終わる事を望むのだが…。

「黒田硫黄らしさ健在」 2008-11-29
レビュアー:にゃず(0人中0人が参考になったと回答)
一目では理解できない構図や雑にも見える絵。
ヘタウマっぽくも見えるが、実は上手い。
登場する物のディティールにもこだわりがみえて
物語りも浅そうでいて深みが有る。
何度か読んで理解できる部分も多い漫画です。
やっぱり黒田硫黄は面白いや。
文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を取ったのはまぐれじゃない。