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フィンランド豊かさのメソッド (集英社新書 (0453)) (集英社新書)
フィンランド豊かさのメソッド (集英社新書 (0453)) (集英社新書)
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集英社

¥ 735

新書

売上ランク:2578位

2008-07-17

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ユーザーレビュー一覧(全9件 平均:4.0)

評価4点「フィンランドに関心があれば気持ちよく読める経験的フィンランド論」 2008-08-11
レビュアー:所沢白猫(22人中16人が参考になったと回答)
フィンランドが教育水準の高さで日本でも広く知られるようになって以来、近年、とみにフィンランドに対して関心が高まっているようだ。本書はフィンランドの地方都市にある大学院に長く留学し、そのままフィンランドに就職した経験がある女性ライターが、フィンランドの文化や生活について語った経験的フィンランド論である。

フィンランドは表面上、決して豊かな国ではない。日本よりちょっと狭いほどの国土に、人口は500万人ちょっとと少なく、冬の気候が厳しく、とくにラップランドなどの北部地方は日照時間がごく短い。また、ロシアとスウェーデンという大国に挟まれ、大国のエゴに翻弄されてきた苦しい歴史を持っている。なぜそのような国を豊かと感じるのか。それは、フィンランド人が自然とうまく共存しているからではないかと著者は言う。そして実際に・・・と著者の異邦人としての体験や見解が述べられていく。

本書は地方紙への連載が元になっているので、広く一般読者の関心を引きそうなテーマをうまく拾っている。また、著者のフィンランドへの愛情が伝わり、実際に経験したことをその場の気持ちもまじえながら素直に述べているので、気分良く読めるフィンランド論となっている。

フィンランドの成功を、フィンランドが小国であることに見ている人が多いのかもしれないが、私は別のところにあるのではないかと考えている。わかりやすくするために日本と比べて考えると、日本とフィンランドの根本的な違いは税金の重さから派生しているのではないだろうか。

フィンランドは税金が高く、多くの家庭で共働きをしている。これは夫の収入でやっていけないだけでなく、女性の意識が高く、子供が出来ても社会で成功しようという意欲を維持できるからという面もあると筆者は言う。また、税金の使い道がガラス張りで、多くの国民が納得できる使い道をしていると述べている。また、そのため、(これは本書には書かれていないが)財政が福祉や教育に多く割かれ、女性の雇用機会を拡大している。かたや日本は世界水準から見ると、税金が安い国である(法人税は高いが)。高齢化が急速に進んでいることもあり、教育や福祉に割かれる支出が減少している。その一方で、財政支出の不透明さは相変わらずである。

税金が高いことは必ずしも悪ではない。日本に必要なのは、税金を上げ、福祉や教育に支出し、新たな雇用を生み出すことである。税金を上げるためには国民が納得できる内容であることがいちばん大切だ。だが・・・フィンランドの政治家や公務員のひたむきさや真面目さと日本のそれを比べると、絶望的な気持ちになってしまう。

最後にちょっとだけ揚げ足を取ると、経験談は面白いが、調べて書かれているところになるとまるで学校のレポートのようにトーンが落ちたのが少しだけ残念だった。とはいえ、全体的には高評価を与えたい。フィンランドに関心がある方はぜひご一読を。
評価5点「瞠目すべきフィンランド事情リポート、日本社会の未来を考えるヒントが豊富」 2008-08-09
レビュアー:少子化問題に直面しようとしない日本(18人中14人が参考になったと回答)
大変な掘り出しものである! 冷静かつ多方面に渡る観察は貴重だ。特にフィンランドが失業率20%という過酷な不況から短期で立ち直った過程を描いた第1章は必読である。当時のフィンランド政府は迅速に金融機関の不良債権を処理した後、IT産業に集中投資する一方で道路関連など歳出を絞り込み、教育と人材育成に注力したのである。日本が成長率で逆転されたのも至極当然と言えよう。

「政治家の役割は、国がいかに危機に瀕しているかを国民に知らせ、それを克服するためには大きな変化、痛みが必要なことを分かってもらえるように説き、状況を判断し最も相応しい決断を迅速に行うことだ」と、当時の閣僚の言葉が引用されている。日本の政治家の言説と比較して、いかがだろうか。

印象に残るのはフィンランド教育の実態で、1クラスが25人以下でしかもアシスタントやボランティアも多く、かなりの予算をかけていることが分かる。真似できないと思ったのは「教師は国民のろうそく、暗闇に明かりを照らし人々を導く」とする意識で、彼我の隔たりには驚くばかりだ。常に問題意識を求められる教員の質も高いに違いない。地域や学校への権限委譲が進んでいるのも特筆される。

類書との違いとして、フィンランドの失業率が高く、意外に学歴社会である(だからこそ勉強熱心になる)ことを指摘した点が挙げられる。教育関係者へのヒアリングを主軸に構成した研究者の著作では全く触れていないところだ。
競争やめたら学力世界一―フィンランド教育の成功 (朝日選書)

その他、フィンランドの徹底した合理主義には学ぶところが多かった。日本人を「決断が遅い」「要求が多い」「何を言っているのか分からない」としたフィンランド人の日本評には爆笑させてもらった。(多いですよね、こういう人)
評価4点「単純に日本と比較はできないにせよ、考えさせられることの多い本」 2008-08-14
レビュアー:辰巳(14人中8人が参考になったと回答)
森と湖の小国・フィンランドは、たしかにゆったりとしているし、
自然も豊かだし、教育水準も高い。
そういったプラスの面を紹介し、ある部分で日本の現在を見直すという点では評価できる。
ただ、社会保障制度が手厚い分、税金も高いこと、失業率や離婚率も高いことなど
マイナス面になるとややトーンダウンする。

それでも、高い税金をガラス張りで使っており国民からは大きな批判は出ていない。
これからの日本がフィンランドのような国をめざすかどうかはともかく
(国土面積は似ているが、人口がまったく違い単純比較はできないと思う)
「税金を有効に使う」という、国としてきわめて当たり前なことを
この本は教えてくれる。それはおそらく、著者自身が、フィンランドに批判はありつつも、
基本的には愛情を持っているからだと思う。

単純に「スローライフを見直そう」ということではなく、著者が言いたいのは、
女性の社会進出、透明性の高い税金の使途など、この国の「シンプルさ」ではないだろうか。

著者は文筆業でもあり、文章は非常に読みやすい。フィンランドに対する愛情は感じられるが
過度な思い入れもなく、読後感は爽やかでもあった。
評価3点「フィンランド」 2008-09-16
レビュアー:常夏(14人中8人が参考になったと回答)
世界学力調査1位に輝き、日本でもフィンランドの
学習方法などの著書が数多く出版されている。

本書は、著者の実体験を織り交ぜながら、否定的な
要素も含めて、フィンランドを紹介している。

非常に読みやすい本ではあるが、一個人の意見として
読み物として読むことをおすすめする。
評価4点「フィンランドの一端が垣間見られる」 2008-07-26
レビュアー:毒ギョウザ(11人中6人が参考になったと回答)
学力調査や国際競争力ランキング上位国として有名なフィンランド社会の実情。長く現地で暮らす筆者の生活視点でのガイドという感じ。
他の北欧諸国同様、手厚い社会保障とそれを支える高税率が特徴ではあるが、同時に徹底した競争と効率化も存在する点が興味深い。テーマが社会全体と幅広く、分量的にもそれほど深い考察は無いものの、その分読みやすく飽きもこない。90年代、失業率が20%に迫るほどの不況を経験しつつも復活した同国には、日本も学ぶべき点が多いだろう。