いもづる式 トップに戻る ヘルプ

書籍の詳細&ユーザーレビュー一覧

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)
沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)
click for big image

 

新潮社

¥ 620

文庫

売上ランク:4114位

2001-11

Amazonでの販売状況

→通常2~5週間以内に発送

amazonで詳細を見る

ユーザーレビュー一覧(全62件 平均:4.0)

評価5点「待望の文庫化」 2002-01-13
レビュアー:くま(39人中33人が参考になったと回答)
長い間文庫化を待っていた。最初の但し書きを見よ。「この作品は、多数の関係者を取材したもので、登場人物、各機関・組織なども事実に基づき、小説的に再構成したものである。」こういう文が書けるのは日本広しといえども山崎豊子ぐらいだ。氏がいかに綿密な取材をもとに事実を指摘しているかは、今まで金融・商社・戦前米の日本差別・文化大革命と孤児問題さまざまなタブーに挑戦してきたのに、いまだに名誉毀損で訴えられたことが無いことからも明らかである。今回も一巻を読む限りでは汚い労組潰しと不当人事がこれでもかというくらい描かれている。労組員の要求をもとにした団体交渉は、もっともオーソドックスな交渉であるし、当初社長側も一つの意見に感情的に応対したりして、推拙な部分もあるが、まともに交渉に応じる。しかしいったん破れると、交渉には不誠実な態度に終始し、やがて第2組合を作って分裂させるという戦略にてる。これは一人この会社の問題ではなく、広く日本の労働運動の問題でもある。山崎豊子の勇気に敬服する。
評価5点「人間の強さ、おろかさ」 2006-07-02
レビュアー:john(34人中29人が参考になったと回答)
ある男が某国営航空労組の委員長を引き受けたがために、彼の人生を左右させるほどの人事差別を受けていく。
10年にわたる歳月を、アフリカでたらいまわしにさせられながら耐えて行く「アフリカ篇」。
いまだに夏になると思い出す「御巣鷹山篇」。
関西経済から経営建て直しのために就任した会長を支えるための会長室の部長として社内の暗部と格闘する「会長室篇」。

全体を通じて作品の底流を流れる、「人間の尊厳」とは何か、という作者の問いかけに対して読者も考えながらページをめくる。

「御巣鷹山篇」だけは、この作品のなかでも独立している。
文庫であれば3巻目だけを読めばあの悲惨な事故が甦る。
御巣鷹山篇だけは事故の被害に遭われた方が実名で登場する。
改めてあの事故がどれほどの人間の人生を狂わせたかを思い知らされる。

事実を元にして「小説的に」構築した作品であるために、登場する人物は「大体」実名がわかってしまう。
取材対象も「差別された側」からの情報が多かったであろうことは想像に難くなく、その点については批判があることも承知している。
しかしながら、片方の側から見えた「事実」がここにあるのである。

会社と個人の関係について考えると共に、作者の力量に感服した。
評価4点「アフリカの大地のもとで」 2006-03-21
レビュアー:考える犬(26人中23人が参考になったと回答)
 日航機事故という史上最大の航空機事故とその周辺を知りたいと思ったのが、この本を手にしたきっかけでした。(事故当時、僕は小学校低学年でした)
 不遇の主人公、恩地元がアフリカの大地の中で不条理と戦い、また、その中で御巣鷹山での事故が起こる。御巣鷹山事故のことを当初最も読みたかったので、第一巻「アフリカ篇」は正直いって一体どんな話なの??と。しかし、この小説がこのようなベストセラーとなったのは、1巻から5巻まで通じている雄大なアフリカの大地が支えていると感じました。
 この小説は、事実を小説として再構築した作品、でありますから、はっきりノンフィクションというわけではないし、事実に反する部分に対し、多くの反論や疑問の声もあるようです。しかし、この小説の中には事実を元にした多くの人間界の真実が織り交ぜられているように感じます。生々しい御巣鷹山の悲劇と残された遺族の闘いは、涙なしには読めませんが、その周辺の様々な人間模様、企業の中の権謀術策、どれもこれも含めて、人間の中身を強くえぐり出すものです。事実と小説的再構築のはざまの中で、決して嘘をつかない存在としてアフリカの大地が横たわっています。素晴らしいアフリカの描写の数々がなければ、この本がこのようなベストセラーになったでしょうか?
 恩地元がブロンクスの動物園を訪れるシーンが印象的でした。全篇にわたってすばらしい小説であり、星5つの評価としたいところですが、事実をもとにしたこの小説において事実と違う部分が存在することが指摘されており、その部分を考慮して星4つとします。しかし、人間の真実を描く、といった点において、このようなことはこの小説の価値を下げるものではないと感じます。
評価5点「一人でも多くの人が読むべきです」 2004-03-04
レビュアー:(26人中21人が参考になったと回答)
この本を批判する人たちは、この本をたくさんの人に読まれては困る人たちだろう。政治家と御用マスコミ記者と会社幹部と御用組合役員の癒着。日本には利権に群がるくだらない人間がたくさんいることに憤慨し悲しくなる。一人でも多くの人がこの本を読むべきである。この信じられないような航空会社は実在しているのだ。そして会社の不当な介入と闘いながら、安全運行のために日々ご苦労されている心ある人たちがいることを僕たちは知っておかなければならない。
評価3点「強すぎる事実への思い」 2002-08-17
レビュアー:とりさん(30人中16人が参考になったと回答)
「誰もが知る」と形容しても良いくらいの「日航機事故」。本作は、このあまりに大きな事故を扱っているため、山崎氏の「小説家」としての魅力が損なわれている作品になってしまっている。

70年代、『不毛地帯』を本当に寝食を忘れて読み続けた。事実の裏づけ方、エピソードの積み重ね方がまさに名人芸で、小説につられて「商社マンになろう」などと決意したりしたものだった。それからもずっと「事実の積み上げ」の技術を見せ付けてきた(盗作問題などもあったが、それもまた「積み上げ」技術のひとつとは言えよう)山崎氏だが、本作においてはそれが欠点になってしまっているようだ。山崎豊子を知らず、これから作品を読もうとするならば『不毛地帯』、『二つの祖国』、『白い巨塔』、『大地の子』など他に面白い作品がたくさんあるのでそちらをお勧めしたい。