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書籍の詳細&ユーザーレビュー一覧

使命と魂のリミット
使命と魂のリミット
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新潮社

¥ 1,680

単行本

売上ランク:51842位

2006-12-06

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ユーザーレビュー一覧(全44件 平均:4.0)

評価5点「緊迫の医療サスペンス」 2007-01-22
レビュアー:ヤキソバ(16人中15人が参考になったと回答)
凄まじい緊張感に、手に汗を握る。
特に、終盤の、緊迫した場面は、著者ならではだ。

当初、本書のタイトルは、何を意味するのか、釈然としなかった。
しかし、読み進むとともに分かって来るが、最後は「使命」について、考えさせられる。
警官の使命、医師の使命、、、そして我々自身の使命についても。

現在の手術は、電気とは切り離しては、考えられない。
電気メス、心電図モニター、レスピレーター、人工心肺装置などなど。
ここに着目され、さらに、いくつかの人間模様がからめられ、大変面白い内容となっている。

ところで、別の患者のレスピレーターを動かすために、通電を要請される下りがある。
病院では、停電用バックアップ電源に加えて、レスピレーターそのものも、バッテリーを搭載している。
このバッテリー駆動時間は有限ではあるが、電源が尽きた場合は、手動でエアバックを操作する事が出来る。
私は、勤務医であるが、長時間の停電のため、手動でエアバックを操作し続けた経験が1〜2度ある。
この部分に少し違和感を感じたが、物語の本質とは別の問題だ。

しかし、電気が使えない状態で、あらゆる工夫が行われ、最大限の努力がなされた。
これこそ医師の使命だと感じる。

使命とは、与えられた(限られた)条件下で、最大の努力を行う事だとも言える。
病院の外でも、それぞれの使命を、この様に解釈する事も出来る。

著者もまた、作家という使命を全うしている。
評価3点「登場人物が善人ばかりで..」 2007-04-27
レビュアー:哲人36号(16人中14人が参考になったと回答)
タイトルにあるスリルは味わえるし、ストーリーもテンポよく展開していくので、あっという間に読み終えてしまったが、東野作品としては凡庸に思う。
性善説に立ったかのようなきれいな結末であるが、毒のない登場人物ばかりなのがそれを暗示しており、先が読めてしまうという点でサスペンスとしては致命的。犯行にあたっても現実的にはまず不可能な手段であるし、あまりにも狭い範囲で人間関係がつながりあってるのは小説とはいえ、不自然さを感じる。人の「使命」とは何かを命題に描かれた作品のため、登場人物の心の揺れは念入りに表現されており、十分読ませてはくれるが、犯人が犯罪を決行するまでの過程がやや描写不足であり、舞台背景となる病院の描写も表面的で、重いテーマの割りに重量級の作品になり損ねた佳作といったところでしょうか。
評価3点「使命」 2007-02-12
レビュアー:tn581jp(14人中13人が参考になったと回答)
テーマとしては、重すぎもせず、軽すぎもせずという感じか。しかし、読後感は実にさわやかである。内容に触れることになるので詳しくは書けないが、困難な状況の中でも手術を行い、患者を全身全霊を尽くして救おうとする医師たち、裏切られた傷を抱えながらも患者を救うために電話をかける看護婦…その自らの使命を懸命に果たそうとする姿勢には、なんともいえないすがすがしさを感じる。読後には、すっきりとした爽快感が広がる。

「使命」…これが、この小説のキーワードになる。果たして,どれだけの人間が、それを意識して仕事をしているだろうか。しかし、どんな職業にもそれは存在する。プロ棋士にはいい勝負をしてファンを楽しませるという使命が、お笑いタレントには人を笑わせ、楽しい気分にさせるという使命がある。そのような職業の人間には迷う時期があるらしい。将棋を指して何の意味があるのかと思い、ボランティア活動に参加した棋士もいたそうだ。だが、その時期を過ぎると、これが自分の天職だと思えるときがくるという。このとき、その人は本当の意味でその道のプロになり、使命を自覚できるようになったといえるのだろう。この小説の中心となる事件は、ある人物の使命感の欠如から起きる。そういう意味では、多くの社会人に意識してほしい2文字である。
評価5点「レベルの維持がすごい!」 2007-05-29
レビュアー:ミシシッピかずみ(21人中13人が参考になったと回答)
 東野作品の中でベスト1だと思います。読み終わった後に、痛烈に考えさせられるものがありました。登場人物それぞれが(犯人でさえも)、それぞれ自分のなすべきことを自分の場所で懸命にやっている、その真摯さが胸を打ちます。「多分、こういう結末なんだろうなあ」というところから大きく外れはしない展開なのですが、それもまたよしです。(ちょっとした意外な展開はあったけれど…)東野さんは、『容疑者Xの献身』で直木賞をとらなくても、こちらで、充分、受賞できたと思います。レベルの維持がすごいですね。
評価5点「「心」に突き動かされ、翻弄され、けれど「心」によって救われる。」 2006-12-18
レビュアー:猫村しず(13人中11人が参考になったと回答)
まさか泣くとは思わなかったのだが、最後の数十ページは、涙が止まらなかった。

一つには、研修医・夕紀の、長年の孤独──ごく近しい人たちを心の奥底で疑いながら、そのことを誰にも打ち明けることができずに生きてきた、悲しい孤独と、その彼女の疑念を知りながら、ただ見守ることしかできずにいた、周りの人たちの愛と苦悩を思って。

もう一つには、初めは利用し利用されるだけの関係だったはずの穣治と望の間に、いつしか本物の愛情が芽生えてしまっていたこと、そしてそのことが穣治の良心をどうしようもなく目覚めさせてしまったことに。

結局、この物語の中には、根っからの悪人と呼ぶべき人間は一人も登場しなかった。

誰もが、目に見えない自らの「心」に突き動かされ、翻弄され、けれど最終的にはその「心」によって救われる。
うまく言えないが、そんなふうに感じた。

文中に何度も登場する「使命」という言葉。
人は誰もが果たすべき使命を持っていて、その使命を果たすことがかっこいい生き方であり、幸福な生き方なのだ、という人生観、人間観には共感を覚える。

この本のタイトルは、非常に風変わりであると感じる。
「使命」という言葉が使われるのは分かるし、「リミット」も納得できる。
ただ、もう一つの「魂」という言葉がなぜここで使われているのかは、もしかしたら著者から読者への一つの謎かけなのかもしれない。
その理由を自分なりに考えてみるのも面白い。

直木賞作家の名に恥じない、堂々の力作であり、非常に完成度の高い、読み応えのある一冊だった。