ユーザーレビュー一覧(全110件 平均:4.0)

「伊坂ミステリーの妙を堪能しました」 2007-11-30
レビュアー:風(106人中86人が参考になったと回答)
杜の都・仙台を舞台に、仕組まれた首相暗殺事件の犯人に仕立てられた男が、必死の逃亡者として逃げ切り、生き抜こうとするストーリー。
謀略者や警察、マスコミによって作り出された男のにせの姿が、男をよく知る親友たちと主人公が関わっていくなかで、真実の姿へと変わっていく。最初のうちは、虚像として映っていた絵をばらばらにして、あるべき場所にパズルのピースをはめこんでいくと、最初の像とは全く違う青柳雅春の実像が浮かび上がってくる、そんな感じ。ぱたり、ぱたりと、主人公・青柳雅春の虚像が引っくり返されていく展開が小気味よく、絶妙でしたね。
暗殺事件の真相は、事件当時のものとは違っていたことを明らかにした上で(事件から20年後の話を描いた後に)、黒い霧の中に葬られた事件を、カットバックを巧く使いながら描き出していく話の展開、伏線の生かし方も見事だったな。
殊に、青柳雅春の必死の逃避行を描いていく中に、彼と親友、恋人との思い出の光景が差し挟まれるところがよかった。容赦のない、冷酷無惨な謀略事件と比べると一層、彼らの脳裏に浮かぶ思い出の風景が、あたたかく輝いているように見えました。
久しぶりに読んだ伊坂ミステリー。これは面白かった!

「冴えわたる伊坂幸太郎ワールド」 2007-12-07
レビュアー:Wakaba-Mark(68人中53人が参考になったと回答)
伊坂幸太郎の14作目に当たる本書は、2年ぶりの書き下ろしで、しかも1000枚、単行本にして501ページにも及ぶ久しぶりの大長編である。
メインのストーリーは、首相爆殺の濡れ衣を着せられた男の逃亡劇である。
第一部「事件のはじまり」、第二部「事件の視聴者」を読んでいると、青柳雅春という奴は本当に犯人で、悪い奴だと思い込まされる。これが実は普段われわれがマスコミを通して知る“事実”なのだ。
第三部の「事件から二十年後」というルポで「おや?」と思い始め、本書のメインである第四部「事件」に入り、リアルタイムで事件について語られ、青柳の逃亡劇を読み進むうち、彼の実像と“本当のこと”が分かる構成になっている。
とにかく、逃げる!逃げる!青柳、そして彼を直接的に間接的に助ける仲間たち。とりわけページを割いて登場するかつての恋人樋口晴子の活躍は印象的だ。
そして、伏線と過去のカットバックが効果的に取り入れられていたり、人を喰ったような意外性もあったりして、行間からは“伊坂エッセンス”が溢れている。
本書は、「現時点での伊坂小説の集大成」と呼ぶにふさわしい大作で、伊坂ファンもそうでない人も、きっと時を忘れて読み進んでしまう、そんなリーダビリティーを持った一冊である。

「事実は角度が360度あるのです。」 2007-11-30
レビュアー:rinkorin(51人中34人が参考になったと回答)
先ほど読み終えました。
全米が興奮!首相殺害の無実の罪を被せられた男が、巨大な陰謀からいかにして逃げ切るか!!
・・・という見出しがたいていはつくのでしょう。帯もそんな感じでした(最悪・・・笑)
ですがこの作品が本当に警告している恐怖はそんな陳腐な言葉ではなく、
人ではない、なにか大きな巨大な、個人をいとも簡単につぶす黒いものです。
そして足下に忍び寄る監視社会と、報道によっていとも簡単に歪む事実、
私たちが情報に踊らされている現状です。
自分の中の先入観とか、疑わない悪い意味での純粋さとか単純さを、
明確に自覚させられる恐ろしい、でもものすごく面白い小説。
もちろん娯楽物としても面白いですが、
是非とも単なる娯楽に終らない読み方をしてください。
たまに、ニュースを鵜呑みにする単純な人に呆れる時があって、
是非ともこの小説をぶつけてあげたいです笑。
今までの伊坂さんの作品と比べ、誰もおちゃらけてなくてちょっと異質。
「魔王」が好きな方にはおすすめ。ホントどんな小説もかけるな〜伊坂さん!凄い!

「ツッコミたくなる凡庸な結末だが」 2008-01-03
レビュアー:Here is Eden(47人中29人が参考になったと回答)
爆破による暗殺が起こるまでを描いた第一部、
冒頭数ページのイントロがあまりに凡庸。
正直、何度か読むのをやめかけた。
工夫、が足りないだろ、と思った。
第四部の途中で或る人物がストーリーに強引に参加してきたところで、
結末の展開が丸分かり。まさかそうじゃないよなぁ…裏切ってくれよ…
と祈るものの、まさにありきたりな、それしかないんかい、
とツッコミたくなる予定調和の結末。おいおい。
国家的陰謀から逃げる方法が××って、工夫なさすぎ。
誰もそこを指摘しないのはなんでなんだろ??
確かに途中の展開はぐいぐい読ませます。面白い。
だからこそ物語の始まりと終わりがあれでは、もったいない。
結局、新しい小説を読んだ、という気がしないのである。
どこかで見た世界。どこかで読んだ物語。
少なくとも、ミステリとしても小説としても、
もっと高みを目指せたはず。手放しで絶賛すべき作品ではない。
予定調和=ハリウッド映画、では断じてないと思うのだ。
(決してハリウッド的ではない第三部の試みについては評価したい。
その謎が解けるのが、もっと第四部の終わりのほうであれば文句なしだった。
皮肉なことに、映画化の際にこの章をうまく映画の中で処理するのは
相当に難しいだろう。おそらくばっさりカット、ではないか…)
でも、嫌いじゃない。
若い頃読んだ原田宗典の長編の雰囲気を思い出した。
『スメル男』とか『平成トムソーヤー』とか。
小説としてはうすっぺらいのだけど、憎めない。
いちばん魅力的だったキャラクターはキルオ。
青柳が味わう、犯してもいない罪で逮捕されるという恐怖。
それは、何をしても無意味な、天が降ってくるような恐怖だ。
そして連続無差別刺殺犯のキルオ。彼はある種、
天が降ってくるような恐怖を被害者たちに与える存在だ。
でもキルオが“狂って”いるようには思えない。
この小説の中で唯一「新しさ」と可能性を感じさせる造型だった。
スピンオフで、キルオの物語を読みたいなぁ。

「これはスタンドバイミーでしょう」 2008-03-21
レビュアー:リリーのパパ(47人中22人が参考になったと回答)
ほとんどが高評価なので、あえてこんな読者もいるという事も知ってください。
著者より二周り近く早く生まれた私たち団塊世代は中学時代にケネディ暗殺を日米間初のTV衛星中継で見て、ビートルズのデビューから解散までリアルタイムで過ごし、ラジオとレコードで想像するしかなかった彼らの演奏を初めてエドサリバンショーで見て感激し、高校の授業をさぼって武道館でついに生ビートルズの演奏を見た(歓声で歌声は聴こえなかったが後日TV放送で声をだしているのを確認した)のです。 ゴールデンスランバーももちろんリアルタイムです。 この小説は決してゴールデンスランバーではありません。 無理に曲名をつけるとしたらスタンドバイミーしか浮かびません。 やぎさんゆうびんもありかな。
なぜ今こんな内容の作品を発表するのか作者の意図がわかりません。 国家に個人が完全に管理される時代が来るよ、という警告なのでしょうか。
そんな事は誰にも周知の事実でしょう? それとも友情の大切さを伝えようとしているのでしょうか?
それにしても内容は無実の罪を負わされた若者が国家権力から逃げ回ってついにある手段で逃げ切るというだけの事で、それはないでしょう、というような突込みどころも多く、結局真犯人が明かされるわけでもなく、小じゃれたラストではい終わります、ではしらけます。 主人公がその後どのような人生を過ごしてどのような最期を迎えたのかが知りたいです。
小説としては構成力、伏線、会話、時間軸の置き方等一級品ですが、題材が陳腐です。 感動が小さいです。 もっともっと傑作を書いて十数年後に最高傑作を書いてください。