ユーザーレビュー一覧(全32件 平均:4.5)

「素晴らしい本だが、警戒しながら読んでちょうどいい」 2007-03-31
レビュアー:アキレスの踵(60人中46人が参考になったと回答)
「国家の罠」「獄中記」と併せて読みました。著者の知性の強靭さ、知的人脈の広さ、仕事のダイナミックな進め方など読む本ごとに刺激を受けっぱなしです。組織の中で生きる男の生き様を、国際政治の最前線でこれほどリアルに書いた本は少ないでしょう。これから社会に出る人にも、すでに出ている人にも読むたびに教えられることが多々あるはずです。
しかしこれほど素晴らしい文章家なのに、どうしても引っかかるものがあります。亡くなったロシア語通訳米原万理さんの本にも同じことを感じました。米原さんも名文章家で、読むたびにその世界に引き込まれたものでした。しかし米原氏も佐藤氏も、うまく隠そうとしているものの、心のどこかに共産主義へのシンパシーを宿しているようで、それがふとした言葉の端々に感じ取れます。わたしの気のせいかと思っていましたが、「諸君!」5月号に佐藤優氏への批判記事が出ていて、その中でもはっきり指摘されています。
佐藤氏の主張でいちばん賛成できないのは、鈴木宗男氏のやったことを擁護している点です。佐藤氏は、ケインズ型公平配分主義からハイエク型自由競争主義への転換の中で、前者の立場を取る鈴木氏が犠牲になったかのような言い方をしています。しかしこれは詭弁でしょう。鈴木氏は北方領土返還の道筋をつけると称して、医薬品の緊急援助くらいならともかく、発電設備まで国民の税金から援助して、担当企業からキックバックを受け取っていました。はたしてそこまでやることに、国民はいつ同意したのでしょうか。
佐藤氏の書く本が名著であることは否定しませんが、できれば「諸君!」の批判記事も併せて読むことをお薦めします。佐藤氏には佐藤氏独特の癖、ゆがみのようなものがあり、読者は決して氏の信者になってはいけません。

「ラスプーチン青春記」 2007-01-29
レビュアー:ninjaninja(44人中38人が参考になったと回答)
記録的価値もさることながら、筆者自身が歴史の転換点に立つにいたった
プロセス、「外交官佐藤優」が出来上がるまでの成長譚が非常に興味深く、
甘酸っぱい青春小説のような感想を持ちました。
鈴木宗男、アントニオ猪木らとの奇怪な人脈。クーデターのその朝に街中の
キオスクから小銭を買占めて情報屋のインフラを一手に押さえこみ、超高級
ホテルでは丼一杯のキャビアをウオトカで流し込んで大物政治家の懐に飛び込む。
印象的なのは、これらのいかにも「ラスプーチン」的なエピソードではなく、
行間から立ち上ってくるすさまじいまでの勉強に対する執着心でした。
秘密情報の見立てを行うべく現地新聞に赤線を引く姿と、国策捜査の果てに
獄中で決意した余生−ラテン語の古典を訳す姿は不思議と重なります。
神学を究めようとチェコへの留学を思ったことをきっかけに、なぜか
ノンキャリア3等書記官という外交の獣道に入り、モスクワ大学で議論と
ウオトカに明け暮れていたとき、同年代の日本人はバブルに狂奔していました。
あとがきで、著書「国家の罠」がこれほど話題になるとは思わなかったと
述壊していますが、その後に出版される作品が全て好調なセールスを記録
している背景には、本の内容だけではなく、特異な経歴と学問への真摯な
向き合い方で個を確立した、佐藤優という一人の日本人が我々に訴えかける
何かを持っていたからだという気がします。

「孤高のインテリジェンス」 2006-07-24
レビュアー:embody_invisible(35人中34人が参考になったと回答)
いや実に面白い。「国家の罠」でもそうであったように、読み進めていくうちに小説と錯覚してしまう。それほどに読者の想像力を刺激する。
この著は氏が外交官としての成長と外交官兼スパイになるまでの過程を、ソ連が自壊しロシアに至る大きな歴史の流れに組み込んだものである。そもそも、ソ連が自壊する過程を知らない人は意外と多いはずである。その自壊の過程は実に人間臭く有機的な匂いを放っている。それを知る事が出来るだけでも一読する価値がある。また、その自壊する過程の中で氏の果たした役割は非常に大きいのである。
西側の外交官にして共産党派に多くの人脈を持つ異能の外交官。卓越した洞察力と孤高のインテリジェンス。真にエリートであると痛感させられる。
なお、今回は艶っぽいエピソードが適宜導入されており、思わずにやりとしてしまう場面も多々ある。
とにもかくにも、日本政府は逸材の人物を自ら手放してしまった。殊に外務省の体質弱化には目を覆いたくなるものがある。

「前作『国家の罠』との見事な連環」 2006-06-14
レビュアー:ddt(34人中32人が参考になったと回答)
購入してそのまま、一気に読破しました。面白かったです。前作『国家の罠』を読んで以来、佐藤優さんの類い希な知性と、その文章が醸し出す前向きなユーモアセンスに魅了されてしまいました。
今回の作品では、情報分析官としての修業時代に遭遇した、「ソ連崩壊」という大事件を佐藤さんの独自の視点から描いています。史実を淡々と時系列で述べていくのではなく、ソ連という巨艦が沈没していくプロセスを、その現場に居合わせた人々の動きを追うことで、緻密な人間ドラマとして描いている、力作です。
それにしても、モスクワ大学での反体制派学生とのひとつの出会いをきかっけに、アカデミズムやジャーナリズム、守旧派の共産党幹部にまで人脈を広げ、様々な情報を取ってくる佐藤さんの姿は、ラスプーチンというより、ゾルゲのようにも思えました。
また、物語の最後で、前作と見事な連環を見せるのですが、その辺りの筆力は、熟練した小説家のようでした。

「これはすごい」 2007-01-05
レビュアー:kaz-p(34人中30人が参考になったと回答)
手島龍一氏との共著「インテリジェンス」から流れてきました。
筆者が如何にしてロシア専門家となったのか、
そしてどのようにしてソ連崩壊時の主要な政治家と知り合えたのか、
などなど、いずれも興味深い話題で、一気に読み切れました。
ロシアにおけるキリスト教に関する予備知識も適宜補われており、
勉強になりました。
「インテリジェンス」冒頭にある、「秘密情報の98%は公開情報を
再整理することにより得られるという。」の例とも言える新聞の読み方
なども披露されており、興味深かったです。