ユーザーレビュー一覧(全604件 平均:3.5)

「時代の潮流に乗ったインスタントの御説教」 2006-06-22
レビュアー:まっとう鯨(43人中27人が参考になったと回答)
藤原先生は難しい口調で大切なことを論じることで、一定の読者を確保してきた地味な大学の先生だった。ところが、東大を定年退職した養老先生がインスタント本を作り、印税を稼ぎまくったという風潮に煽られて、藤原先生までが粗製乱造のベストセラーを狙い、編集者に操られてアイディアを提供され、インスタントに作ったのがこの本である。だから、藤原先生が持つ考えというよりも、編集者が売れ筋だと予想したテーマに従い、名義貸しによって作られた本を読まされることは、長年の先生の愛読者としては情けないという印象が残るのである。なぜならば藤原先生が欧米に留学していた頃の新鮮な感受性や、文化を相対化する態度が全く消えていて、倉庫から引っ張り出した『武士道』を論じ、しかも、国家の品格を傷つけている政治やバブル経済を弄ぶ者に対しては、鋭い憤りの心を投げかけようとしていないのが丸見えだからである。矢張り本は自分自らペンを執り、じっくりと考えながら書くというのが、読者への心配りを持つ著者の品性だと思う。そこで残念ながら幾ら売れても評価の星は二つである。

「武士道の誤解」 2006-08-06
レビュアー:zaq12wsx(42人中27人が参考になったと回答)
独断と偏見は確かに楽しいですが、
とりあえず、「武士道」の引用の仕方は間違っています。
新渡戸稲造は決してそんなことは言っていません。もし「武士道」を日本人の魂と思われるのであれば、新渡戸稲造全集を読んでください。

「いい本だと思います」 2006-08-17
レビュアー:桃の里(44人中27人が参考になったと回答)
本書は決して国粋的な本ではないと思います。欧米の思想のある部分に批判を加えることは国粋的とは無関係ではないでしょうか。本書にはナショナリズムは不潔な思想であると書いてあります。もちろん反米的な本でも反中的な本でもないと思います。部分的な批判は可能とは思いますがそれは新書ということで著者が言い尽くせなかったからではないでしょうか。行間をどれほど読み取れるかで評価は分かれると思います。私はこの本のスケールの大きさに感銘を受けるとともに日本からもこのような本がついに出たかと感動いたしました。一読の価値ありと思います。

「なぜ...」 2006-12-05
レビュアー:hatena(52人中27人が参考になったと回答)
なぜ日本人は自分たちの問題, 責任を考える前に "アメリカ化に踊らされてきた日本人" の一言しか出ないのでしょう。 もういい加減他国のせいにばかりしていないで, 自分たちが引き起こした自業自得だと気づきましょう。

「快哉!」 2005-12-14
レビュアー:helleborus(52人中26人が参考になったと回答)
漠然と感じていたことを見事に書いて頂き、胸のすく思いです。民主主義・グローバリズム・自由経済が行き着く先は、マスコミに踊る衆愚政治・アメリカ原理主義・拝金主義に他なりません。少しは違った行き方をしようとする他の国々に背を向け、アメリカの飼い犬化する日本。自己責任論が跋扈し、額に汗して働く人が報われず、居ぎたなく節操なく、多くの人が、そして子どもたちが、落とさなくてもよい命を散らす国。こんな国になるなんて、こんな国にしようなんて、誰が思っていたでしょう。小学校で英語と株を教えられる小学生は、どんな日本を作るのでしょう。何かがおかしい。小さな異変が、現政権のもと大きな異変につながりかけています。鉄筋をごまかしたマンションは、そのまま今の日本の姿です。
惻隠の情、という言葉にはっとさせられました。近頃絶えて聞くことのなかった表現です。こういう心や美的感覚やもののあわれといった、一見社会と関係なさそうな感覚が、実は日本と言う国のありかたの大きな支えだったのですね。武士道を失った日本の軍部が卑怯な戦争を引き起こした、という見方にもうなずけるものがあります。
昔の日本は悪くなかった、という論法を最近よく聞きますが、懐旧・復古主義の域を出ない主張も多々あるように感じます。何がどう悪くなかったのか、一番納得いったのが本書でした。たぶんそれは、議論の根本が、「ならぬことはならぬものです」という、理屈抜きの美しい信念から発しているためだと思います。
数学者らしく明晰な(全体の構成にはやや重複や前後もあるような気はするがオマケ)、ユーモラスな、そして日本に対する切々とした愛情があふれた名著だと思います。意を尽し、しかも無駄のない文体にも感服しました。多くの人が読まれることを願います。