ユーザーレビュー一覧(全59件 平均:4.0)

「痛快!養老節は健在」 2006-03-20
レビュアー:Wakaba-Mark(15人中8人が参考になったと回答)
’03年の発行以来いまだに売れ続けている『バカの壁』の続編ということらしい。
前書では、<我々人間は、自分の脳に入ることしか理解できない。学問が最終的に突き当たる壁は自分の脳である。著者は、この状態を指して「バカの壁」と表現する。知りたくないことは自主的に情報を遮断し、耳を貸さないというのも「バカの壁」の一種。したがって「話せばわかる」なんて大うそ。その延長線上には民族間の戦争やテロ、犯罪、宗教、科学、教育、経済の軋轢がある。>というのが論旨だったように思う。
本書も前書同様、養老先生の独白を編集者が文章にまとめるという体裁になっている。ご自身が著したものならば、まだ筆の調節とか押さえがきくだろうが、独白であるがゆえに論旨には遠慮がない。さらに本書は、テーマを「若者の問題」、「自分の問題」、「テロの問題」、「男女の問題」、「子どもの問題」、「お金の問題」・・・など現代の日本社会が抱える身近な12の具体的な項目に分けているだけに、前作の延長線上で容赦なくそれぞれの問題をばっさりと斬る、痛快きわまりない養老節が随所に見られる。たとえば「靖国の問題」のくだりでは、「本来はいちいち細かくいう必要もないくらいあほみたいな話です。」と言い切っている。
本書の魅力は「今の日本社会には、明らかに問題がある。どんな問題があるか。私はものの考え方、見方だと思っている。そこがなんだか、変なのである」という観点からホンネで述べられている養老節なのだろう。私たちはそれらを参考に、現代を生きる日本人が心の「壁」を超えるためのヒントを得ることができるような気がする。

「衣食足りて、脳が働く」 2006-04-03
レビュアー:練馬のよっちゃん(16人中8人が参考になったと回答)
昔から「衣食足りて礼節を知る」と言われています。それは、脳というものは衣食が足りていないと、正常に働かないそうなんです。ひもじいと、食い物のことばかり脳は思い続けます。金がないと、金のことばかり考える。この本でそれを知って、納得してしまいました。

「スカっとします」 2006-07-25
レビュアー:chance(11人中8人が参考になったと回答)
「バカの壁」「死の壁」に続く第三弾。
壁シリーズ(?)は最後らしい。
養老氏の本は、読むとスカっとする。
最近気付いた自分のもやもやが活字にされいてるように共感し、
一気に読めてしまう。
誰にでも書けるような勘違いを起こしそうだが、
養老氏以外には書けない内容というのが魅力的である。
そして、とても元気になれる本なのだ。
ベストセラー作家でありながら、時折過激な表現もあるが
文脈を追っていくと納得できる。
そこがまた、読者を引き付けてやまないのだろう。

「頭の中をニュートラルにしてみる」 2006-02-11
レビュアー:マルガリータ(14人中7人が参考になったと回答)
生きていく上で、自分が得た知識や体験した事象を自分なりにひと括りにして固定観念や定見を作ってしまう。
自分では偏った考え方やものの見方をしていないつもりでも、いつの間にかマスコミや世間の風潮に乗っていたりすることもある。
この本を読むと、正にその通り穿った意見だと共感を覚えることもあれば、ちょっと論理が飛躍しているなと思うこともある。
それは著者も分かっていて、ようは受け取る側の問題なのだと思う。
養老孟司がすべて正しい訳はないのだから、ただその歯に衣着せぬ意見と独特の切り口を味わいながら咀嚼すればいいと思う。この本をきっかけに一度自分の「壁」をチェックするのもいい。

「親父の言葉」 2006-02-14
レビュアー:Taklow(16人中7人が参考になったと回答)
社会問題,個人の問題,悩みなどについて解剖学者の養老孟司が意見を放っている。この「壁」シリーズも三作目を迎えたようだ。
社会問題やら戦争問題やら「解剖学者が何をえらそうなことを・・・」と思っていたが,それは私の偏見に過ぎなかったようだ。ここに書かれている内容はどれも説得力があり,読むものに思わず「ウン」といわせる内容である。
そこに書かれていることはしかし,養老の「意見」である。だが,それらは論拠づけられており,単なる思いをぶちまけているだけではない。いや,思いをぶちまけているといえば,否定しようがないくらいその通りではあるが,さすがは東大教授。論理的,科学的に,人に読ませる文章を書くということを心得ている。
「今の日本社会には,明らかに問題がある。年をとったせいで,そう思うなら,それでいい。もしそうでないとしたら,年寄りが世間に対してなにかいっておく意味があるかもしれない」という養老の言は,言ってみれば保守的である。人によっては説教臭くてヤダ!と言うかもしれない。
しかし,「二十歳やそこらで自分なんか分かるはずがない・・・仕事とは社会の穴を埋めること。自分にあった仕事なんて探してもダメ・・・本気で仕事をしろ」というメッセージはそれだけ見ると確かに説教臭い。しかしそれらは,コンテクストの中で「養老自身の言葉」として私たちに働きかける。
しかし,逆立ちしてもこれは養老の意見に過ぎない。ここに書かれていることは真理などではなく,ある意味で頑固さすら感じるこれらの言は,いうなれば現代社会に養老が投げかける「親父の言葉」である。価値観の多様化が進み,何が良くて何が悪いのか分からなくなってきた現代社会に,養老の声は自分の人生の中で培ってきた年季の入った自論をぶつけているのである。養老孟司の「壁」シリーズは売れているようである。実は私はこれがはじめて読んだ「壁」である。これだけを読んでなんだが,こういう本が売れるのは「父親」という存在が希薄化した現代のひとつの証左なのかもしれない。
一言ことわっておくと,「親父の言葉」であるがゆえに,別にそれを信奉しなければならない必要は全くない。全く無視しようとも構わないのである。この養老じじいの言葉と自分の考えを対比させ,自分の考えをどのように発展させるのか。そういった活動にこそ,意味があるのではないか。
ともあれ,一読の価値はある。章立てなので読みやすく,私のようにこれまでの養老の著書をまともに読んだことがない人にも読みやすいと思う。