ユーザーレビュー一覧(全18件 平均:4.5)

「中国社会にとどまらない文明論。わかいやすい!」 2006-09-02
レビュアー:いせむし(18人中17人が参考になったと回答)
中国および中国人に関する書籍は数多く出ているが、「貝と羊の中国人」は抜群のできである。著者は中国史、日本史、漢文、数多くの日中の古典をふまえ、なおかつ冷静な視点で本書を書き上げている。
通読すると、その博学ぶりに驚くし、私のような無学な者あっても縁遠かった中国の歴史の体系的な理解ができてしまう。とにかくわかりやすい。
著者は東アジア、ヨーロッパを俯瞰した上で、中国人の歴史観、世界観を説明する。したがって本書に書かれているのは、中国だけではなく、日本、ヨーロッパ、朝鮮等の世界観・歴史観であるし、その精錬課程である。壮大な文明比較論である。
中国とのつきあい方を考えとき、我々はともすると中国を一方的に非難しがちであるが、本書を読むと中国人の精神構造がよくわかり、冷静に中国を見つめることができると思う。
多くの人に読んでいただきたい一冊。

「中国理解に不可欠の書」 2006-07-08
レビュアー:イサーン太郎(17人中16人が参考になったと回答)
中国は殷人とそれを滅ぼした周人の文化を基盤にして成り立っているという。
中国大陸の東方に住んでいた農耕民族的な殷人は目に見える財貨を重んじてきた。その仲立ちをしたのが貨幣としての貝だった。貝を要素とする多数の漢字、寳、財、貸、貧、賞などその名残である。殷はまた商とも言った。商人とは殷人のことである。
一方、殷を滅ぼした周は羊に基づく西方の遊牧文化の民だった。東方農耕民族の殷人が多神教的だったのとは反対に西方の遊牧民族的周人は一神教的だった。一神教的神は目に見える物質的な捧げ物より、善、義、儀など抽象的な行為を好む。これらの漢字には羊が含まれている。その他、美、養、犠、議、羨など、抽象的な行為に関するものが多い。
中国人の実利の追求には凄まじいものがあるが、その反面、儒教に代表されるイデオロギーに殉じるのも同じ中国人である。現在中国の政治は共産主義、経済は資本主義の淵源はここにあるという。
この貝の文化と羊の文化から出発して、著者は流浪のノウハウ、中国人の頭の中、人口から見た中国史、ヒーローと社会階級、地政学から見た中国、黄帝と神武天皇、中国社会の多面性と説き進める。どの項目も非常に深い洞察と示唆に富んでいる。
また「支那」呼称についての解説は今まで接したどの説明よりも当を得ている。

「表層的ではない中立的な中国論」 2006-06-29
レビュアー:革命人士(16人中15人が参考になったと回答)
中国に関心がある人は、「加藤徹」と付くだけで手にとってもいいのではないか、と言う位どれも面白い。本書はがっちりした論考ではないが、殷周革命まで遡り、日本人とはかなり違う中国人の思考を解説している。最近粗製濫造の感もある表層的な「現代中国論」とは一線を画し、遠回りだけど歴史から大づかみに見ていこうという著者の姿勢に好感が持てる。これだけ中国本が出ているにもかかわらず、歴史から現代に通じる斬新な「中国の法則」を次々に提示する著者に脱帽する。
特に秀逸なのは、ヒーローと階級を論じた6章。英雄岳飛を殺し売国奴と忌み嫌われる秦檜は今なおすさまじい憎悪の対象となる。中国人は仰ぎ見る英雄と徹底的に嫌われる悪役が必要としていて、古代では曹操、現代でその不幸な役回りを負っているのは日本だと指摘する。
また、北京に首都を置いた王朝は長持ちし、江南に首都を置いた王朝は短命という法則もなるほどという感じだ。海、砂漠、山などで周囲の文明から隔絶された中国だが、北京だけは平地が続き、大混乱に陥れる敵がいつも侵入してきたからだという。
このほか、人口が増えると王朝が滅ぶ法則、羊が付く文字は理念を、貝が付く文字は物財を表す法則、中国は坊主めくりが成立しない国などユニークな法則が続く。中国への理解と共に苦言も呈し、巻末では友好関係構築のための提案もする。どちらかに傾することもなくバランスもいい。読みやすい文で楽しめる。

「中国人と日本人が友人となり、互いに師弟となるために必読の書」 2006-07-22
レビュアー:monchat(16人中15人が参考になったと回答)
何十年ぶりに新書を手にし、時間も忘れ、あっという間に読んでしまった。本書を読んでわかるのは、ヨーロッパ文明がギリシア精神とキリスト教・ユダヤ教文化の相互交流・衝突によって発展してきたように、中国も殷発祥の財貨中心の現世主義(貝の文化)と周発祥の一神教的な正義追求の羊の文化があって、それらの相互浸透・衝突によって発達してきたということである。中国人が本音と建前を日本人以上に使い分けるのが上手なのは、すでにそこを濫觴としたようである。東西古今の古典について通じている筆者は、才気縦横に刺激的で興味深い指摘を本書で行っている。新書レベルをすでに超えた秀逸な着想を幾つも示しており、文体にやや生臭さがあっても、すべてが研究者の本音で書かれており、若い読者層から硬派のインテリ層、中国ビジネスに没頭している実業界の人達など、広範な層に浸透していく深い内容を持っている近年まれにみる良書である。
東南アジアの経済・政治は、結局中国人と日本人で殆どすべてが決まるようになっており、「アジアで2匹の巨象が喧嘩をすれば、周りは踏みつぶされる」と言われている。本書を読むと改めて、中国をむやみと礼賛してもならないし、軽蔑してもならないことを痛感させられる。中国の歴史が長いからと言って日本人はそれに簡単に圧倒されてはならないし、あるときは中国人に対して良き批判者として、あるときは協力者として振舞わなければならない。これは中国人も同様である。歴史の長さ、国土の広大さ、人口で争う時代は過去の世紀のものとなりつつあり、本書で時折示されているように、もっと斬新な観点を持つべきである。実際にはどちらも片側通行だったのに、日本と中国は昔から深い相互交流があったと誤解している人達には、本書のような最新の解説書は大変有益となる。日本と中国は、これから本格的に解逅し始めるかもしれない。

「ニーハオ・トイレの秘密」 2006-12-01
レビュアー:maru_O(17人中15人が参考になったと回答)
まず結論。絶対に買うべきです。中国人とビジネスをしようと考えている人、国際社会に興味のある人、逆に日本社会について知りたい人、もしくはこれからの社会を生きる若い人。目からウロコが何枚落ちるかわからないほどの秀作です。詳細は多くの方が賞賛されているので割愛しますが、たとえば本書で紹介される「ニーハオ・トイレ」について。なぜそこには個室という概念がないのか。理屈でなく感覚として納得できる。私も中国ロケに行った際、日本人の感覚ではあり得ないほど近づいてきてファインダーを覗くといった中国人の行為に仰天した覚えがありますが、本書を読んで「なるほど!」と思わず膝を打ちました。極論すれば、この本だけでも読めばいい、とすら思います。著者が意外と若いのにも驚きましたが、なるほど、だからこそ逆に屁理屈のスパイラルに堕ちずに「実践の書」になっているのかもしれません。読んでつまらなかったら私が金を返してもいいくらいです。