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失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)
失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)
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中央公論社

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文庫

売上ランク:1190位

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ユーザーレビュー一覧(全73件 平均:4.5)

評価4点「冷静な分析に好感の持てる労作」 2003-12-05
レビュアー:hehehehe(28人中18人が参考になったと回答)
「モスラがたった一匹で我が国のためにゴジラと戦っているのを、座視するわけにはいかない」と言って、首相は現場の反対を押し切り、まだ修理が不完全なメカゴジラに出動を命じる。メカゴジラを敬礼して送り出す自衛隊員たち。「ゴジラ対モスラ対メカゴジラ」の1シーンだ。本書にあるとおり、失敗の本質は行政やビジネスの世界だけでなく、怪獣映画にいたってもまったく改まっていない。何の違和感もなく映画を見る人々。この国の本質なのであろうか。

かつて、戦友の遺骸を収容する「戦場掃除」を名目に、不毛の地の国境紛争から順次発展したノモンハン事件。一司令官の妄想を妄想と知りつつ、彼の顔をつぶすに忍びないという仲間の愛情から決行されたインパール作戦。敵輸送部隊を目前に、非戦闘部隊への攻撃を潔しとせずに見逃したレイテ作戦などを見ても、この国の軍隊は結果を問わないサムライに率いられていたのだ。目的と手段との整合性に価値をおかない体質、結果への想像力の欠如、これらがあいまって行為の動機だけが重視される、世界にもまれな美的な精神史を作り上げた。さらにこの国の戦争指導者には、失敗への浪漫性のようなものがあったのではないだろうか。スターリンへ報告されたジューコフの日本軍評にある「司令部は無能」のひとことにこそ、世界の客観的な評価があると思われるのだが。
本書は社会科学の手法で旧軍の行動様式を分析したたいへんな労作だが、これからは文化人類学的な価値体系から見た分析も、もっと必要なのではないかと感じられた。

日本の軍隊は強いのだから敵を殲滅すればいいとした、いかにも臆病な都知事の辻政信的積極発言はさておいて、どうしても自衛隊をイラクに派遣するという現司令部が、失敗への浪漫主義者でないことを祈る。

評価4点「本質というよりは・・・」 2002-08-11
レビュアー:yuun(29人中17人が参考になったと回答)
この本の始めにあるように「失敗の本質」という名前は
やや誇大なタイトルである。
日本軍を組織という観点からみた分析の本であり、
この本に失敗の本質すべてを求めても失望させられるだろう。
(すべてを書いた本など書けないだろうし、
そんなことを求めることそのものが無理な話だ)

私がこの本を読んで興味深かったのは、日本軍という組織が
実は官僚制組織として不完全であったという点である。

いわゆる下士官の独断を許す、下克上があり、
信賞必罰が徹底されなかった。
攻勢の独断は許されたが、撤退の独断は許されなかった。
攻勢のミスは大目にみられたが、消極的と見なされると厳罰が下された。

以上のような指摘は、失敗を恐れず、好機を見逃さない反面、
個人的な情緒!と無謀な攻勢がみられた日本軍の
性質をうまく指摘している。

全般的にやや失敗に傾きすぎだという点があるが、

(つまりアメリカ軍が何もかも優れているというような視点は少し問題があるような気がするが)
「日本軍がどうしようもない」だけでなく、
何に問題があり、どういう点が米軍と異なっていたか
という点についてうまくまとめられている。

評価5点「理念なき国のゆくえ」 2005-06-16
レビュアー:kaz0775(20人中16人が参考になったと回答)
本書はノモンハン事件から大東亜戦争終戦までの、戦いをケーススタディとして、日本軍は何故、負けたのかという命題を歴史家、組織研究者などの学際的なグループによる失敗の研究と題した試みである。前半はケーススタディとして、大東亜戦争を中心とした戦局とその場の大本営や現場の指揮官の判断の様子を紹介する。後半は、後からの理由づけや、さまざまな偶然の要素の絡む勝敗を決する何故まけたかというテーマを分析している。
 印象的だったのは日露戦争の勝利の貢献者である海軍参謀、秋草真之の教訓をベースとした海戦要務令が兵器や戦術の変化の中で改訂される事もなく昭和になっても形骸化した規則となっていた事だった。
むすびの中で組織の目的、概念の創出の欠落の大きさを指摘している。これは戦争に限らず日本人が苦手とするものであり、企業や政府にもあてはまると感じる。
 
評価5点「反戦主義かどうかというスタンスで読んではならない」 2002-12-13
レビュアー:河合 拓(19人中15人が参考になったと回答)
大東亜戦争の日本軍の組織戦略の具体的な事象を通じて、なぜ彼らが戦争に負けたのかということを論理的に解明している書である。この本はすばらしい本であるが、読むためにはコツが必要だ。まず、ここに登場する数々の軍部の非科学的な行為、過剰な精神論、分断されたコミュニケーションなどの事例を読み進み、その結果、貴重な生命を落とした若者たちに憂いを感じるというシナリオではこの本のスタンスがゆがんで見える時があるだろう。ここに登場する著者達が経営学者ばかりであることからも、この本は、現代の日本企業および、日本組織がもつ根本的な失敗の本質を浮き彫りにし、その事象を日本軍の事例をもって描くことで明快にし、現代の組織人へのメッセージところにしていることは明らかだ。読み進むにつれ、諸問題を抱える日本企業の失敗の本質が見えてくる良書である。
評価5点「少なくとも、戦史として読む本ではない」 2004-04-11
レビュアー:趙子竜(23人中15人が参考になったと回答)
この本はあくまで「組織論」テキストに付随する事例集である。
たまたま事例を太平洋戦争に求めただけ。
そして「この傾向、あなたの会社にもないですか?」
というのがこの本の問いかけ。

だからこそ、ノモンハン、ミッドウェーといった
部分局面、それもあくまで戦術指揮官の意思決定面といった
ある意味「偏った」議論に終始するのである。

著者たちが「この6つで十分」と言い切るのも理由はそこにある。

組織論の事例以上のものではないから、それぞれの戦闘の
惨状にもさほど触れていない。

そういう目的意識でこの本は読むべきだと思う。

そこが見えていなければ、この本は議論が中途半端だ、
というだけで終わる危険がある。