ユーザーレビュー一覧(全274件 平均:4.0)

「数学者の「論理」と女の「情」」 2006-01-27
レビュアー:シロフォン(6人中5人が参考になったと回答)
本格ミステリには違いないのだけれど、トリックが途中でぼんやり察せられてしまった(少なくともトリックに使用されたモノは割と早くにピンと来てしまった)。
読了後の重量感は、個人的には『秘密』や『白夜行』の方が上だった。
けれど、ミステリと胸を打つ物語を融合させ、多面的な読み方を許すこの小説が、これまで多彩なジャンルに意欲的に挑戦して来られた著者の到達点であることは間違いないでしょう。
とは言え、この作品を待たずとも、もっと早く直木賞を授賞すべきだったですよね。その直木賞の選考でもなお「これは恋愛なのか」と難色を示す声があがったとか?
・・・・・恋愛に違いないでしょう。どこまでも隙のない「論理」でもって靖子に献身し、守り抜こうとする石神(そこまで考えるのか!と圧倒されました)。これに対し、靖子の「情」(じょう)はどう動かされたのか。そのギャップがもたらす結末に胸を衝かれる限り、やはりこれは切なさ極まる恋愛小説とも言えると思うのです。

「二本の交わらない直線」 2006-02-16
レビュアー:ringmoo(7人中5人が参考になったと回答)
ミステリーとしては結構面白い設定だなと思いました。ミステリーと言う性格上、そのトリックについて詳細に書けないのですが、この本に登場する刑事といっしょで、終盤に読み進むまでそのトリックに気がつきませんでした。序盤に提出されている証拠なども今ひとつぴしっと決まらず、すっきりしないまま終盤になりますが、そこで見事にすべてが辻褄があってきます。流石としかいいようがない構成です。
ミステリーと言うことを除けば、物語自体は堅物の数学者の一途な「愛」がすべてで、そこまで出来るのかと言うところを是とするかどうかで、この小説に価値を認めるかどうかということになろうかと思います。

「泣いてしまった。」 2006-02-26
レビュアー:さくら(6人中5人が参考になったと回答)
私は面白かったです。
ミステリーとかあまり好きではないのですが、直木賞とったんだからまぁ読んでみるかという軽い気持ちだったのですが、泣いてしまいました…。
数学だけが生甲斐だった彼に生きる希望を与えたのが彼女。
どんなに彼女の事を愛していたか…。風に乗って入ってくるかすかな声は、石神にとって最高の音楽だった。その光景が浮かんで再度涙が溢れました。
最後は切ない気持ちでいっぱいになりました。
評価を一つ下げたのは、中間にもうひとつ何かあったらなと思ったので。

「見事なミスディレクションです」 2006-03-04
レビュアー:岡山洋一(7人中5人が参考になったと回答)
「運命の数式。命がけの純愛が生んだ犯罪。これほど深い愛情に、これまで出会ったことがなかった。いやそもそも、この世に存在することさえ知らなかった。」と帯にありますが、これが純愛か?という感じですね。ちょっと違うと思いますが。でも作品自体はすごく面白いです。どんどん読ませます。ストーリー展開も良いし、登場人物も良く描かれています。探偵役の物理学者対友人の数学の先生。完璧な犯罪計画を打ち破れるのか?倒叙ミステリの傑作です。「思い込みによる盲点を突つく。たとえば幾何の問題に見せかけて、じつは関数の問題である。」見事なミスディレクションです。やられたという感じです。特にどうってことはないトリックなのですが、見事にだまされました。ただの倒叙ミステリと思って読み進めていると、やられてしまいます。

「純愛では量れない」 2006-03-12
レビュアー:カラ(9人中5人が参考になったと回答)
はたして石神の創り上げた過程と結果は、純愛と言う名で片付けて良いものなのだろうか。
どんどんと読み進めるという感覚よりも、ゆらゆらと漂うように読んでいた記憶である。
しかし石神のキャラクターは魅力的で、だからこそ終焉に向けて、言いようのない不安に襲われる。ゆらゆらと漂っていたのに、気が付けばその流れは速くなり、手足をばたつかせ、流れに逆らいたくなったが、それも無意味であった。そして行き着いた先で見た、結末。
どう感じて本を閉じるかは、受け手に委ねられているのだろう。