ユーザーレビュー一覧(全274件 平均:4.0)

「愛と呼ぶのは間違っている」 2007-04-20
レビュアー:まつ(22人中13人が参考になったと回答)
つい前評判に押されて読んでしまった。
なめらかで簡潔な文章は、読んでいて気持ちいい。
しかし、この作品が東野圭吾の作家生活の集大成とはとても思えない。
一言で言うと、この犯人が使ったトリックが生理的に受け付けないものなのだ。
本格謎解きに、通常のモラル観を当てはめるのは間違っている、という考え方もあるかもしれないが、驚愕の真相であると同時に不快な真相でもあった。
それを作品中に何度も「あのすごいこと」と言わせているところを見ると、作者本人には自信たっぷりのトリックなのかもしれないが。
「理系ミステリ」と言われるとき、人間がコマとして扱われていると言う意図がある気がする。
理論的に考えて、目的を達するために自分自身ですら目的のための捨てゴマにすることは、理屈では分かる。自分ですらコマなのだから全人類がコマ、と言う考え方もあるだろう。
しかし、それを愛と呼ぶのは間違っている。
どうしても「愛」だと言うなら、それは歪んだ愛だ。
感動はしない。
追記
直木賞を取ってしまいました。
相変わらず、選考委員と、まるで趣味が合わない。

「ガリレオこと湯川学が挑む、数学の論理と純愛の論理の双対関係!」 2008-03-29
レビュアー:Tsukaya(16人中13人が参考になったと回答)
探偵ガリレオシリーズの第3弾で初の長編小説。直木賞受賞作としてすでに数多くのファンを獲得しており、それは本書への250件近いレビューからも明らかである。今秋には映画化されるようで、おそらくその前に文庫化されることを想定すれば、本書に対する需要は増し続けるものと思われる。
平凡な数学教師である石神に届いた「運命のチャイム」。いわば「純愛の論理」を「数学の論理」によって極限まで追い求めた男の心理を、切なさを交えて克明に描いた力作だ。多くのレビューが本書の価値や魅力を書いているであろうから、私が新たに付け加えることは多分ない。是非とも一読していただきたい。あえて印象を述べれば、湯川と石神の出会い・再会を描いた箇所には興味をそそられた。互いに別の道を歩むことになったとはいえ、そして二人の時間的距離がいかに開こうとも、両者の心理的距離は一瞬にして縮小するだけの関係であったことがよく分かる。
またストーリーに直接的な関係はないが、石神が行った再追試における、答案用紙の裏に今の自分の考え=数学に対する自分の気持ちを書かせるという1シーンも強く記憶に残った。数学の本質なるものを教えようとする石神の教師としての熱意以上に、「数学を勉強することのそもそもの意味」に生徒が少しでも気がつけばそれだけで十分であるという学問論も決して無視できないように思うのだ。生徒が果たしてどのような「気持ち」を書いたのか、本書では描かれていないのが残念であるが、おおよその見当はつく。「数学と純愛」という一般人には似ても似つかないと思われるものの奥深くに潜む真理に私自身は理解が届いていないが、それは「崇高なるもの」の共通性なのであろうか。
今後のガリレオシリーズにも大いに期待を寄せたいところである。月並みな表現で恐縮だが、いわゆる「美しいものには棘がある」、本書の鮮烈な装丁はそんな内面を物語っているのか・・・。

「内面にある行動の価値基準」 2005-09-04
レビュアー:ベンジャミン(16人中12人が参考になったと回答)
夫と別れ、以前はスナック、今は弁当屋で働く靖子が、娘に十分に愛情をもち、周囲の人々に誠意も持って、暮らしている。決して裕福とは言えないであろうし、不幸にも直面するのだが、彼女が幸せに生きていると感じさせるのは、自身の行動の価値基準が自分の内面にあるからではないか。筆者が描きたかった一方の主人公像は、そこにあるように思う。高校の数学教師だる石神も、自身の行動の価値基準がまぎれもなく自身の内面にある。この著を一気に読みながら、猪瀬直樹の「日本凡人伝」に登場する人物像との共通項が、そこにあることに思い至った。

「ある数学者の純愛」 2006-01-07
レビュアー:竹の梯子(16人中12人が参考になったと回答)
小川洋子の「博士の愛した数式」(新潮文庫)を読んだときにも思ったけれど、数学者とは独特な世界観を有している方である。本書に登場する数学者にもある種の美学を感じた。「白夜行」「幻夜」(共に集英社)で東野圭吾氏による緻密なプロットには常々敬服していたが、今回もすごかった。小出しに小出しに真相らしきものが提示されるので、心の準備というか、ある程度の予備知識を持って、クライマックスに直面した。それでもちゃぶ台をひっくり返されるような衝撃を喰らう。信じられない思いと理解力不足がない交ぜとなって、何度もページもめくり直してしまった。著者が描く「真実」の引き出しはとても深い。そしてなんとも切ない。「名探偵ガリレオ」シリーズの一冊。

「おもしろかったが、感情移入はできず」 2006-03-16
レビュアー:new_river22(16人中12人が参考になったと回答)
直木賞受賞が決まる前に読んだ。
一気読みできて、おもしろかった。
ただ、東野作品の中で好きな部類に入らないと思う。
読んだあとの切なさみたいなものがなかった。
理由は石神が母子を守ろうとする動機のところが
あっさりしすぎで、感情移入できなかったからだと思う。
「献身」ということは、「献身」をするだけの
動機が必要だと思うが・・・。
どうでもいいが、直木賞は今回のような推理ものではなく、
「白夜行」とか「秘密」の方があってると思う。
まぁ、内容はおもしろかったので★4つ。