ユーザーレビュー一覧(全10件 平均:3.5)

「なんじゃこりゃ!?」 2007-04-10
レビュアー:ぽけっと(9人中4人が参考になったと回答)
この著者の『20世紀絵画』が、クセのある文体ながら刺激的で面白かったので期待したが、こっちははずれ。読むに値するのは最初の50ページ、せいぜい100ページまでで、あとは作曲家の名前と作品名の羅列に、独断的で傲慢な批評が延々と続く。作品と時代や社会との相互作用を読み解くと言っておきながら、そのような視点が完遂されている部分はごくわずかで、あとは印象批評の垂れ流しだ。著者の知識はかなりバラツキがあるようで、オペラにはやたら詳しい。また、ドイツ語圏の作品にも、専門に近いだけあって蘊蓄と含蓄がある。反面、ドイツ語圏以外の地域については、さほど理解が深くないようだ。アメリカ大陸や北欧、イギリスの取扱いは、あまりにもおざなりに過ぎる。フランスについても、ミヨーが交響曲を書いていたのだと、さも意外そうに書き連ねているが、そんなの常識ではないのか? ミヨーの室内交響曲(全6曲)には何も触れていないし。対象をドイツ語圏だけにしぼるべきだったのではないか。

「ちょっとどうかと」 2007-08-13
レビュアー:ゼンタのバラード(8人中4人が参考になったと回答)
やたらヒンデミットのオペラが好きなのか、筆者は20世紀オペラの解説書を書き
始めていた。ところが、岡田氏の西洋音楽史の新書が売れていることを知り、
出版社と相談して20世紀音楽史の本へと路線を変更。誰でも知っているマーラー、
さらに、興味を持ち始めたシュニトケやグバイドゥリーナなどの一般的情報で前後
を書き足してできあがったごった煮状態の本と想像する(音楽史上ヒンデミットの
オペラをやたら詳しく書く意味は薄い)。
音楽史的な流れを説明するのに苦労したようで、特に戦後の60年代〜70年代の前衛
の停滞と戦前派、折衷派の共存、80年代以降のポストモダンとIRCAM、東欧系前衛
の活躍、90年以降のスペクトル楽派の興隆といった流れや、戦前で言えば新ウィー
ン楽派と新古典主義の色分け、20世紀において重要な地位を占めるアメリカ楽壇の
ほぼ無視や、パリのミュージック・コンクレートの祖ピエール・アンリの完全無視、
ブライアン・イーノ、デヴィット・ボウイといったロックからの影響の無視など、
20世紀の芸術史を語る上で物足りない。
また個別の曲の解説は総じておおざっぱすぎて、多用される「わかる」とか「わか
らない」という単純な尺度は芸術の専門家らしからぬ感がある。シュトックハウ
ゼン、ブーレーズ、ノーノ、クセナキスといった「わかりにくい」作曲家の作品解
説はグリフィス著の「現代音楽小史」と比べて、この程度?といった感じ。もち
ろん日本の作曲家もまったくないあたり、筆者が毛嫌いしているだけでは??
より本格的な20世紀音楽史を総括した解説書がいずれ、誰かの手(長木、片山ら?)
により登場することを期待したい。

「流れを俯瞰?できてないよね」 2006-10-03
レビュアー:汲平(10人中3人が参考になったと回答)
20世紀の音楽は流れが錯綜していて、それをうまく整理するのは難しいです。それだけに「流れを俯瞰」してくれることを期待したのですが、単なるガイドブックでした。
20世紀の主要な作曲家を多く紹介しています。しかし紹介されている作曲家ですが、力点が滅茶苦茶です。
実際に耳にすることが容易な作品については、実際に聴けばいい、あまり耳にしないけど重要だと(著者が)考える作品を詳細に論じる、といってますが、ヒンデミットの滅多に聴くことのないオペラをやたら詳しく紹介したかと思えば、間違いなく20世紀の主要な作曲家である新ウィーン楽派やストラヴィンスキー、バルトークについては通り一遍な記述に終わっている。あまりに恣意的な選択で、これでは、新書の対象読者として想定される初心者には、流れを俯瞰など望むべくもありません。
新書であるからには初心者をターゲットにしているのでしょうが、それにしてはバランスが悪すぎ。そうかといって、ある程度聞き込んでいる人を対象とするには食い足りない。ちょっと奇妙な本です。

「もう少し普通の言葉を使ってほしい」 2006-12-11
レビュアー:オバサンジョ(9人中3人が参考になったと回答)
「ゆえなしとはしない」など別にこんな言い方をしなくてもいいと思うような部分もあります。法律学者の文章を読んでいるみたいです。この著者の『20世紀絵画』でもそうですが、こういう言葉遣いで損をしている部分はあります。読みなれていない人はめんどくさくなってやめてしまうでしょう。
とはいえ、現代音楽を専門に紹介した本はあまりないので、その方面にアプローチするための知識を身につける本としては使えるでしょう。
難をいえば、オペラの筋書きだけやたらと詳しく、より知名度が高いと思われる作曲家についてあまり詳しい説明がないことです。プーランクやファリャといったれっきとした20世紀の作曲家について何も触れていないのはいかがなものか。ドゥビュッシーやヒンデミートという言い方もあまりしないです。
現代音楽は豊かな世界であり、少しでも多くの人に知ってもらおうという熱意は買えます。今後、CD選びの際に参考にするつもりです。

「「壁」は崩れた」 2006-10-30
レビュアー:カナブンとスズメ(7人中2人が参考になったと回答)
「壁」を壊して、20世紀音楽を使って20世紀という時代に向き合った宮下氏を評価します。いわゆる「右翼的」や「左翼的」というレッテルがあります。確かに各々の作曲家は時代や国家体制に「忠誠」を尽くし、他者に対する暴力を支えたという事実はあります。しかし、「罪ある」作曲家たちの曲を全否定するのは、21世紀の今となっては、「旧時代」的思考のように見えます。彼らの曲を全否定して全く聴かないということではなく、純粋に音の観点からその曲を積極的に聴いて、批評していく時代になったのだと私は考えます。20世紀を歴史的に記述するに当たって、「罪ある」人たちと対峙することが重要なことでしょう。つまり、音楽の面で考えると、それぞれの作曲家の「罪」を常に追求し、常に記憶する。その上で彼らの曲を「音」として自分の内に受け入れ、批評していく。こうしたプロセスを経ることで我々は音楽における20世紀という時代を記述できるのだと思います。
注文を一つするとすれば、本書の構成は多少堅苦しい感じがします。しかも20世紀という「重い時代」のことを考えなければいけないので、読者の中には途中で本を閉じてしまう方もでてくることが予想されます。途中にコラムなど「軽い」話題などをつけるなど、読者に対する配慮が必要だと思いました。宮下氏は、現在のクラシック音楽を「教会音楽」のように閉鎖的だと述べておられます。宮下氏が苦労して書かれた、せっかくのこの新書も「教会音楽」になる恐れがあると思います。
何はともあれ、宮下氏に「ご苦労様でした」という言葉を送ります。