ユーザーレビュー一覧(全4件 平均:4.5)

「はたして死刑で解決するのか?」 2008-09-03
レビュアー:都筑コータロー(18人中12人が参考になったと回答)
本書を読んで感じた事が沢山あるので、以下箇条書きにします。
*死刑制度は凶悪犯罪を抑止する機能をはたしているのか?
小林、宅間のケースでは自ら死刑になるのを望んで凶悪殺人を犯しており
(死刑を自殺の手段としているとも言える)、死刑制度が抑止力になるどころか
引き金になっている可能性すらある。
*最近死刑判決が増えているのは死刑判決を望む遺族感情を重視したものとも言われている。
つまり遺族に代わって国が仇を討つという論理。(それが近代的民主国家のやるべき事なのだろうか?)
だが自ら死刑になるのを希望している被告たちの望みをかなえてやる事が
はたして犯人に対する報復になるのか疑問が残る。
*世界の流れに逆行して日本で死刑制度を支持する意見が圧倒的に多いのは、
凶悪事件のマスコミ報道において犯人がとてつもないモンスターに仕立て上げられてしまうせいもある。
本書を読めば三人の死刑囚たちも心に病気を抱えた普通の(異論もあると思うが)人間であることが良くわかる。宮崎は統合失調症(分裂病)であった事は明らかだと思う。
*最も重要な事はこの様な事件が繰り返されないように専門家による犯罪研究をしっかりやる事。
日本はこの分野が欧米にくらべて非常におくれており、専門の研究所すらない。
とくに宮崎勤の事件は精神医学にとっては大いに研究の価値があるといわれていて、著者は何人かの精神科医から手紙をもらったりしている。
宮崎、宅間に対して早々と死刑が執行されてしまったのは間違いだったのでは?
*事件の解明にジャーナリズムの役割も重要であると著者は訴えており、
今後も御活躍を期待しています。

「死刑囚に同情したが死刑は必要である」 2008-09-04
レビュアー:たか(17人中9人が参考になったと回答)
宮崎勤(幼女連続殺害)や小林薫(奈良の幼女殺害)、宅間守(池田小学校乱入、児童殺害)など、猟奇的、かつ残虐な事件の死刑囚について、犯罪に至るまでの経緯と心理状態等を詳細に描いている。死刑囚との手紙のやり取りなどから生の声が多く取材力は素晴らしい。
これらの死刑囚には共通点が多く、例えば親に愛されることなく(又は本人が愛されていないと感じ)、社会的にも非常に強い疎外感を感じている点である。
象徴的なのは小林薫が著者の発行する雑誌の読者に向けて語っている言葉である。
「子供を信じてあげて下さい」
「子供と遊んであげて下さい」
「子供が2人、3人と居るなら平等に接してあげて下さい」等…。
また、宮崎勤は家族で食事を囲んでいた時代のちゃぶ台を大事に思っていたようだ。
これらの死刑囚の叫びは家族との絆がいかに大事であるかの証左であり、家族との愛情が犯罪の抑止に繋がると強く感じた。
著者は、本書で度々死刑による犯罪抑止力に疑問を投げかけるが、これらの死刑囚の犯した罪の重さを考えると、(特に私が子供を持つ父親という立場もあって)感情的には死刑は止む無しと感じざるを得ない。
日垣隆氏も主張しているように死刑廃止となれば1人殺しても複数人殺しても死刑はないということになるため、死刑に犯罪抑止力はない、と断言するには無理がある。
このため、本書に登場する死刑囚の過ごした幼少期には同情するが、やはり死刑は必要であると思った。

「心の闇を照らすとそこはまた闇しかない、そんな一冊」 2008-09-21
レビュアー:いせむし(8人中7人が参考になったと回答)
幼女連続殺人の宮崎勉、
奈良の幼女殺人の小林薫、
そして大阪池田小襲撃犯の宅間守。
そして若干の林眞須美。
こういう人々の心のあり方を取材を中心に明らかにしている一冊です。
なかなかの力作です。
まず本人も含めての取材の成果として、
本人の心の中にかなり踏み込めているところが、
類似書と異なる。
書簡のやり取りや接見を続けることは、
通常のジャーナリストや学者には難しいことだとうと思う。
そういう活動を通してそれぞれの人格に迫っているところが、
読み応えがあった。
もう一点、本書が優れているのと感じた点は、
通常このように対象者に近づくとどうしても著者の視点も対象者よりになるものであるが、
本書は冷静に犯罪と背景を分析し続けている
そこも簡単ではない。
さて本書を通じて分かったのは、
重大な犯罪を起こす人間の絶望や浅はかさの深刻さ。
犯罪の被害を防ぐことは彼らの気持ちのありようをどこかで救う必要があるが、
それがいつ誰によってなされるのか。
現実は厳しいと感じた。
確かに犯罪は社会的な文脈で理解する必要がある。
それは本書の主張だと思う。
だからと言って、
社会の側から孤独な若者に歩み寄って、
彼らを救済することは不可能だと、
本書を読んで感じた。
心の闇を照らすとそこはまた闇しかない、そんな一冊。

「法相の軽さの指摘が印象的」 2008-11-15
レビュアー:まつたけ(1人中0人が参考になったと回答)
世間を騒がせた凶悪犯・死刑囚3名の家庭背景や事件の経緯、裁判の様子が綴られている。どうやら、凶悪犯の共通点には、父親に対する憎悪があり一方で、母や祖父などの近親者に執着する性質があったようだ。
本書では、死刑の存在意義における著者の見識を交えているが、死刑が凶悪犯の抑止力となるかという点の問題提起で終始している。故に一般にマスメディアが伝える死刑の存置・廃止論と同じであり、その点での目新しさはなかった。ジャーナリズムの本懐として、「ではどうすればよいか?」まで深くを考察してくれることを臨みたい。
凶悪な犯罪は最近に始まったことではない、悲しいのだが時の節々に発生してしまう。死刑の存在意義事態を問うよりも、現状ではたして運用できているのか(死刑囚の収容、犯罪件数)という点で議論をするほうが、建設的ではなかろうか。
また、終盤には法相の「軽さ」の指摘がなされている。テレビで見受けられた死刑執行における政治家の態度の違和感を、ずばり言い当てている一文があり、胸のおくがすっとする思いがした。