ユーザーレビュー一覧(全8件 平均:4.0)

「町人国家論の変奏」 2008-08-15
レビュアー:カスタマー(32人中18人が参考になったと回答)
今まであちこちで述べてきたことの寄せ集めのような印象がある本である。日中関係について、日本が中国から一方的に影響を受けてきたので、恩を返さねばならないなどと間の抜けたことを書いているが、そもそも菅原道真が9世紀末に遣唐使を廃止してから、時折中国の思想が流入することはあっても、日中関係は基本的に断絶していたのであり、一方的に影響を受け続けたと言うのは明らかな誤りである。そもそも日本人が明治維新以来、作り上げた数多くの翻訳語はそのまま中国で使われているのではないか。読んでいるうちに、著者の論旨は、天谷直弘氏がかつて唱えた「町人国家論」に近いと思っていたら、案の定後になって出てきたので笑ってしまった。中国人には誠心誠意話せば分かるとも書いているのだが、これも全くの幻想だ。そもそも現在の中国人の圧倒的多数には漢籍の素養など全く無い。断絶しているのである。著者の言う中国人は著者の妄想の中にしか存在しない。中国人と誠心誠意話せば分かる、ただひたすらアメリカに抗って中国人と仲良くすればいい(笑)というのは、知的退行そのものである。著者は王道を行っているつもりかもしれないが、覇道も必要である。実際、現実に中国がやっているのはガス田、著作権、商標その他数多くのものの侵略と略奪である。最初から日本人をいい獲物としてしか認識しない連中に「誠心誠意話せば分かる」というのは愚の骨頂である。それ以外の部分については有用な部分もあるが、アメリカを嫌うあまりの中国への一方的な求愛はここまで来ると見苦しいの一言である。

「非常に分かりやすい」 2008-07-26
レビュアー:tokujirou(29人中17人が参考になったと回答)
タブーとされている明治維新の本質等にも的確な批判をしている非常に内容の優れた本ではあるが唯一著者の仏教に対する理解が浅い印象を受けた。現代の形骸化した仏教の在り方に対する批判に異論はないが八万四千の法門とも言われる仏教が日本文化、日本人の精神構造に与えた影響は甚大なものがあり、簡単にこれを斬り捨てるのはどうかと思う。これは著者の賞賛する富永仲基にもいえる事であり、この人物の仏教批判に対する批判、反論の声も多い。
一応、気になったので仏教に関する著者の誤解と思われる点を挙げておくと101Pで言う法相宗は唯識論を根本にしており、この唯識は輪廻を肯定し、輪廻からの解脱の道を説いているものであり、著者の「法相宗は輪廻転生を認めない」という点、
それと形而上学の問いに対して釈迦の示した態度は無記であり「輪廻転生を認めないというのがお釈迦様の仏教の思想です。」という点。
また大乗仏教にも触れているが、大乗仏教が勃興した動機は、それまでの形骸化した仏教に対する批判精神であり、本質は釈迦の精神に帰るためのものである。著者は大乗仏教を釈迦が説いたかどうかにこだわっているが大乗経典を誰が解いたかはさほど重要な問題ではない。仏教のポイントは方便、対機説法とも言われている。
そんなことを踏まえつつ是非多くの人に読んでいただきたい本です。

「類書はありません」 2008-07-27
レビュアー:nyagorin(25人中16人が参考になったと回答)
この本の類書はない。
出典の引用も明確であり、実に分かりやすく歴史の事実を示している。
バラバラに公になっている事実をつなぎ合わせて驚くべき真実を教えてくださる。
東京裁判でA級戦犯とされた方の内、海軍出身者で刑死した者は一人もいない。真珠湾攻撃で後世までアメリカでは語り草にされているのにである。そのなぞについても説明される。目からうろこが落ちる思いである。
幕末から現代に至るまでのロックフェラーとロスチャイルドの覇権争いについても、実にわかりやすく説明されている。(商社に勤めているものにとっては常識ではあるようだが)
また、富永仲基の再評価も行う。谷沢永一氏も絶賛していたが、理屈をこねくり回すのではなく、現実の生活に根ざした思想を見直すべきとする。
難解な箇所もあるが、理解できるところから学べば良いと思う。
確かにそう考えればつじつまがあう!久々に本を読んで溜飲が下がった気持ちになった。

「江戸時代の坊主は昔の庄屋や旧国鉄職員(JR)のように威張っていた」 2008-07-27
レビュアー:キングジョージV(19人中11人が参考になったと回答)
副島氏は久しぶりに歴史関係の本を書いたみたいだが、個人的には氏の経済本よりも読み進めるのに時間がかかった感じでした。
まず、この本では「自分たちが学んだ儒教は、中国の学問であり、中国製であるから、日本の知識人たちは、どうしても中国に劣等感が抜けない」「やがてこれらが幕末に尊王攘夷の思想を生んだ」と書かれているが、江戸時代は、ちょうど同じ時期に漢族の明が滅んで、北狄である満州族の清が中原を占領したことから、それまでの歴代中華王朝の中華思想の換骨奪胎で「中華の華は日本なり」とか「神州不滅」という言葉が江戸知識人の間で出てきて、清を正統中華王朝と認めない風潮があったので、一概に古代・中世中国の儒教に対する劣等感だけで尊王攘夷が生まれたわけではないと思います。
ただ、仏教と神道は昔の方が折り合いが悪かったらしく、江戸時代は仏教・寺院勢力が、明治から昭和初期にかけては神社・神官のほうが強かったという話は勉強になりました。日本も、単純な意味での多神教の国ではないと考えさせられます。
「なぜか東京裁判で一人も刑死しなかった海軍軍人A級戦犯」についてだが、戦前の陸軍関係者は欧州に、海軍関係者は米国にそれぞれ留学・研修することが多かったので、恐らく海軍の連中はアメリカのフリーメーソンと接触し、支那事変〜第二次世界大戦(大東亜戦争)の時は米国と内通して裏取引きをしていたのだろう。
文天祥については何年か前に、歴史教育ゲームの老舗・コーエーのテレビゲーム『チンギスハーン4』で覚えたので、とりわけ新鮮には感じなかった。副島氏は自分のことを「日本の文天祥」になぞらえているが「真の日本の文天祥」は最近でこそあまり読まなくなったものの、関岡英之氏の『年次改革要望書』を大々的に紹介したり、「戦前の日本は皆が思ったほど悪い国ではなかった」と告発してくれたゴーマニスト野朗のことだと私は思うが、いかがなものか。まあ、あの人の場合は「正気の歌」というより「狂気のマンガ」だが。
文天祥は攘夷主義者だから、戦後の日本の教科書ではほとんど触れられないが、むしろ彼は岳飛と並んで戦前の大日本帝國の歴史教科書では破格の英雄扱いをされていたのがこの本を読んで容易に浮かんできました。
しかし、第5章を読んでいると、幕府や薩摩藩や長州藩も外から見ると、本当にインドのムガル帝国の残党やマラータ同盟の土侯(マハラジャ)のように見えてきますね。

「なかなか厳しい現実」 2008-09-12
レビュアー:ヒュー(12人中7人が参考になったと回答)
著者は日本人の孔子像と中国人の孔子像が全く違うと冒頭で説明し、日中の考え方にはギャップがあると説く。また「義」という部分をずっと大切にしてきた日本人の美学はアメリカにより、解体されたと続ける。
ラストでは日本は今までユダヤ系金融資本主義に振り回され、その結果今の日本を作り上げてしまったのだから、そのグループと距離を置き、中国を大切にし、アジアを拡大していくことがこれからの日本の道標なんだと結ぶ。
今まで知らなかった部分がわかり、驚きと感動を覚えたのだが・・・
中国人と仲良くしていくのはかなり厳しいと、経験上肌で感じている私は、著者に一つ注文をつけたい。
日中友好の具体的指針を次回作で発表してください。
その後判断します。現状はかなり厳しいですよ。